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おない年の兄妹  作者: 沙悠那
SPICY APPLE PIE
43/66

Episode1 楽しい週末の理由(わけ)

 ここのところ、メグとあたしはとりわけ仲がいい。

 お昼休みにはついついふたりで、祥大やガクくんの話題で盛り上がっている。置いてきぼりになった感のある沙紀ちゃんが、やきもちを妬いちゃうくらいに。

「メグったら、彼氏ができたらあたしにも男の子紹介するって約束したのに、ずるいよ瑠花とふたりでいっつも浮かれて楽しそうにしてさー」

「ごめん、ごめん。けど、まだあたし正式にガクくんとは付き合ってるわけじゃないんだって。だからこうして瑠花に相談にのってもらってるんだよ。ねえ、瑠花」

 そうなの。草食系男子くんは、いまいち押しが弱いのか、ふたりはまだ正式に恋人としての一歩を踏みだしてはいないみたいだ。

 そういうことで、今週末は4人で遊園地に行こうという話が浮上してきた。もちろんふたりの仲を取り持つためにだよ。

 名目はそうであれ、あたしとしても、すっごく楽しみなんだ。だって、祥大と一緒に遊園地なんて想像しただけで嬉しくてたまんない。一緒にジェットコースター乗ったり、観覧車乗ったりできるんだよ。楽しくないはずがないよね。

 早くこないかなあ、週末。待ち遠しいよ、マジで。

「そうだ。お弁当とか作って持ってく? きっと、ガクくんも喜んでくれるはずだよ」

「うーん、料理って苦手だし、逆効果になりそう。遊園地なら食事するところだってあるし、今回はやめとく。また今度、料理の練習してからってことにするよ」

「わかった。だったら、あたしもお弁当は作るのよしとくね」

「え? 瑠花って料理できるんだ」

「うちはずっと母子家庭だったから、料理はあたしの担当だったんだよ」

「いいなあ。料理できるんだ。今度あたしにも教えてよ、料理」

「いいよ」

「なになになんて? 彼氏にお弁当作ってあげるの? いいなそんな相手が居てさ。あたしなんか、好きな人もいないっつーのに」

 沙紀ちゃんは頬をぱんぱんに膨らませながら、話に割って入ってきてむくれ顔。

 その顔をみて、思わずメグとふたりで吹きだしちゃった。

 ごめんね、沙紀ちゃん。メグたちがうまくいったら、祥大に沙紀ちゃんのことも頼んでみるからね。






 そしてやっと、待ち遠しかった週末がやってきた。

 予定より早めに目が覚めたあたしは、顔を洗ってすっきりさせてから、祥大の部屋へと忍び込んだ。

 その目的は祥大の布団を捲り取って乱暴に起こすこと。きっと、びっくりするだろうな。ふふ、思わず笑いが込み上げてしまう。

 心の中でせーのと掛け声をかけながら、一気に布団を引き剥がした。

 やったぁ、なかなかみごとな剥がしっぷりだった!

 朝からいい仕事してるね、あたし。

「な、なにすんだよ。さっびぃーーー」

 温もりから一転、冷えた空気にさらされた祥大は、くるんとまあるく縮こまっていった。

 まるでなにかの昆虫の幼虫みたいに。

「早く起きないと置いてくぞお。出かけるまであと15分ほどしかないよ、こらお寝坊祥大!!」

 そういうと、まるまっていた祥大はびくっとなって飛び起きてきた。

 自慢のサラ髪が、変なところが跳ねちゃって不格好だ。

 寝起きの祥大って無防備でかわいい。他の女の子には見せらんないあたしだけの特権。

「おまえ、殺すぞ。まだ8時にもなってねーじゃねえかっ」

 やばい、もうばれちゃってるし。けどもう手遅れだった。

 本当で殺す気じゃないよね?

 あたしの首は祥大の両手で包囲されていて身動きすらできない。おまけに指に力が込められている。声帯を圧迫される前に謝んなきゃ。

「祥大、ごめん。そんなに怒るとは思ってなかったんだ。お詫びに祥大が準備している間に瑠花特製のフレンチトースト作っておくから、だから許して。首から手離して」

「マジか?」

 縦に動かせない頭のかわりに目をぱちくりさせて、その意志を祥大へと伝える。

「だったら許す。甘くておいしいの作ってくれよな」

 指の力を緩めた祥大は、あたしの額に自分の額をこつんと軽くぶつけ、額をひっつけたまま、そう言ってきた。

「瑠花特製のフレンチトーストは蜂蜜が決めてだから、まかせて」

「じゃあ、まかせた」

 あたしの額にチュっとキスをする祥大の顔は、すでに寝ぼけ眼じゃなくなっていた。




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