Episode7 運命の悪戯
「なあなあ、おまえさ、どんな子を紹介してくれんだよ。もったいつけてないで教えろよな」
「馬鹿かおまえ。俺が知るわけねーだろが。俺だって今日初めて会うんだぜ」
「なんだ俺はてっきり会ったことあるのかと思ってたのによ。ブスだったらぶっ殺す。俺あばれっからよ。場合によっちゃ、おまえの彼女をかっさらってやるからな」
晴哉のやつ、勝手なことばっか言ってやがる。まったく。女っ気のなくなったおまえに女の子を紹介する俺様のことをもっとありがたく思えっつんだ。
それになんだよ。香水なんかちゃらちゃらとつけてんじゃねーよ。おまえってば気合い入れすぎなんだって。がっつきすぎて逆に引かれても俺は知らねえからな。
待ち合わせた街のカフェに着くと、すでに入口あたりからウェイティングの人で溢れかえっている。そいつらを掻き分けるようにして中へと入ると、店内も席待ちのやつらやなんやらでごたごたしているありさまだ。これじゃ有未香がどこにいるんだか、さっぱり見当もつかない。うっすらとだるさと苛立ちが身体中を駆け巡る。
「祥大くんっ、こっち」
手を振りながら笑顔の有未香がこっちへと近づいてくる。
立ち止まると晴哉の姿をすばやく上から下まで目を走らせてチェックして、にこっと微笑んだ。いちおう有未香の審査はパスしたようだな晴哉。よかったな。
「祥大の彼女さんだよね? 俺、木本晴哉ってんだ。お友達はどこにいるの?」
「おいおいっ、焦るなよ晴哉。みっともねえ奴だなおまえ」
「うふふっ。あっちで待ってるの。席はキープしてあるから、早く行こっ」
そう言うとすぐに身を翻した。スカートの裾が僅かに踊る。
有未香の後ろについていく俺と晴哉はどんな子が来ているのだろうと期待に胸を躍らせる。
祈るように両手を握りしめて俯く、そんな姿をしている有未香の友達が、有未香の声に反応して顔をあげた。
その子の視線と俺の視線がすぐに交差して、お互い目が離せなくなってしまう。
なんでかって、それは事もあろうに有未香の親友ってのが、あの瑠花だったからだ。同じ高校の2年生だとは認識していたが、俺の中でふたりを関連付けしたことなんて、まるでなかった。俺としたことが、もう少し慎重にことを運ぶべきであった。
瑠花のやつも動揺を隠せないのか、目を大きく見開いて俺のことを凝視している。
そして今度は隣に座った有未香のほうへと視線を移していった。
「こっちがあたしの彼氏の田中祥大くん、それでこの子があたしの友達の田中瑠花ちゃん。あれ? そういえばふたりとも田中って、おんなじ苗字だったね。まあよくある名前だから不思議はないか」
苗字も一緒だけどさ、住んでる家も実は一緒なんだけど……。
「あのさ、こいつさ……」
やばっ、晴哉! 余計なこと言うなよ。
咄嗟に腕で弾いてテーブルに置いていた携帯を床へと落とし、何とか晴哉の言葉を制止した。
やっぱまずいだろ。親の再婚で苗字変わったとかばらされたら。俺と瑠花が兄妹になったことにもし気づかれたりしたら。
それによ、俺は今分かったんだ。どうして晴哉に親の再婚でおない年の兄妹ができたってことを告げなかったのか。心のどっかでガードしてたんだ俺。
晴哉がそのことを知ると、絶対に紹介しろだの、家に遊びにくるだの言うに決まっている。
そうして瑠花に近づこうとするのが目に見えていたから、無意識に警戒してたんだ。
なのに何だよ。
結局、俺は晴哉に瑠花を引き合わせるはめになってんじゃねえか。
知らなかったこととはいえ、俺は馬鹿だよ。大馬鹿者だ。何やってんだか。
なんだよ晴哉のやつ。瑠花を前にして、にちゃけた面して鼻の下伸ばしてやがる。だらしねえ顔すんなって。
瑠花、おまえもだぞ。何、愛想振りまくってんだ。そんな顔は俺にだけ向けてろよ。
いつもクールなはずの俺なのに、こんなに心ん中掻き乱されてるなんてさ。
まったく、ありえねーんだよ。




