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おない年の兄妹  作者: 沙悠那
LIMEMINT TABLET
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Episode3 とまどいだってあるさ


 初めて待ち合わす場所にしてはちょっと酷だったかな。

 大社への初詣客が怒涛(どとう)のごとく押し寄せる駅の改札口ってのはマズかったか。

 それによく考えても見たら、彼女の顔はうろ覚えで、しかも今日の彼女は制服姿ではない。そうなるとかなり面倒なことになる。初詣客の群衆から、彼女の姿をみつけるなんて不可能に限りなく近いだろう。

 早めに家を出ることにして、先に待ち合わせ場所に俺がいけばいいんだ。彼女に俺のことを探してもらうのが得策だろうから。




 親父の新妻が昨日から料理本とにらめっこしながら、懸命に作り上げたであろうおせち料理の数々がテーブル狭しと並んでいる。悪いが俺はこのまどろっこしい家族ごっこに付き合ってる時間は、残念なことに余りないんだ。ほんと残念なんだが。ってわざとらしいか。

 ふーん。今日は正月だから特別に親子揃って着物なんか着てんだな。

 俺の目の前で嬉しそうにめでたい顔しながら座る瑠花のやつ。めずらしいことに口紅つけてんのかよ。ただのガキだと思って相手にもしてなかったけどさ、こうしてみると見た目そんな悪くねえんじゃねーの。

 まあ、あいにく俺はこれから女の子と会うことになってるし、おまえがいくらめかしたところで相手はしてやれねーんだけどね。

 おまえ? まさか俺の心の声が聞こえたのか?

 今ものすっげー不機嫌な顔しただろうが。悔しかったらおまえも初詣いく相手くらいみつけろよ。

 俺ってば、さっきから何ガチで頭ん中トークしてんだか。

 ぶっちゃけ、俺は突如同世代の女の子と一緒に暮らすことになって、とまどってたりするんだよ。

 そりゃ、今まで人並みに何人かの女の子と付き合ってきたし、自分でいうのもなんだけどモテないわけじゃない。だから女に対しての免疫だってある。正直言ってエッチするのも好きだよ。

 けど、俺だって一応はまだ高校生なわけで、思春期真っ只中で、多感な時期なんだって。

 それなのにいきなり何の前触れもなく新しい家に着くなり突きつけられた事実がこれだ。

 同世代の女の子が同じ家に居るって状況にびっくりするなってほうがどうかしている。動揺しないほうが不自然なんじゃないのか?

 まったく親に振りまわされる子供って不幸なもんだ。自分たちは互いに惹かれあって一緒になるのはいいが、俺と瑠花は有無を言わせず引き合わされて、『はい、おまえたちは今日から兄妹ね、よろしく』的な流れだもんな。ほんとに不幸な話だ。

 そういう意味じゃ、目の前でさっきから俺のことを睨みつけるような挑戦的な目でみてやがるこの少女も同じ犠牲者なんだよな。

 それはいいとして、なあおまえ、そんな目で俺見てんじゃねえよ。

 俺なんかおまえに恨みかわれるようなことでもしたか?

 ってか、ろくに口も利いてねーし。

 親父から軍資金も頂いたことだし、そろそろこのうっとおしい空気から逃れるために出かけるとするか。

 俺はさりげなく席を立ったつもりであったが、親父の奴は鋭く反応してきた。

「なんだ。もうでかけるのか?」

 後はあんたたちで仲良くやってりゃいいだろ。黒いダウンジャケットを羽織ってリビングのドアに手をかけた。ダイニングのほうへともう一度視線をやると、飽きもせず瑠花はじっと俺の行動を見据えていた。なんだってんだ、あいつ。

 そういえば思い出した。おまえ昇華高校に通ってんだよな。

 俺はその昇華に通ってる有未香ちゃんだっけか? 彼女に今から会いにいくんだよ。じゃあな瑠花。




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