Episode1 出逢いは突然に……
あたしには、おない年の兄妹がいる。
無愛想でかわいげのない奴。
昨日のクリスマスイブは生まれて初めて盛大にクリスマスパーティーってのをやった。
美弥ちゃんは張り切ってハンドメイドのクリスマスケーキなんて作っちゃって、おまけにオーブンでターキーまで焼きあげていたっけ。
あっ、美弥ちゃんっていうのはあたしの母の名前。あたしと美弥ちゃんは母ひとり子ひとりの関係だった。一昨日のクリスマスイブイブまでは……。
正直、結婚を考えてる彼氏がいるって聞かされた時はびっくりした。だけどそれからあまり時を置かずして美弥ちゃんは結婚したのだ。ロマンティックにクリスマスイブなんか選んで。
あたしが物心つく前に美弥ちゃんはあたしのお父さんと離婚していたもんだから、あたしは父親の愛情も温もりも知らずに育った。美弥ちゃんはあたしを育てるために一生懸命働いてくれていたからクリスマスイブを家族で祝うなんてことは今までしたことがなかった。
ホワイトクリスマスならぬ小雨降るクリスマスイブの日に、祖父母が残してくれたあたしたち母子家族の家に美弥ちゃんの愛しい彼とその息子がやってきたんだ。ひとり娘だった母の姓を残す為にわざわざ婿入りまでして。
いつもはふたりで対面して座っていたダイニングテーブルに空席なく4人きっちりと座ってる。その光景は想像したこともなかったから違和感でそわそわしてしまう。だけどあたしの前の少年ときたら、座り崩して退屈そうな不機嫌そうな顔をしている。
「それじゃあ、クリスマスパーティー兼ぼくたちのささやかな結婚パーティーを始めるとしようか」
「ええ、そうね。グラスにシャンパン注ぐわ。瑠花たちはコーラでがまんしてね」
美弥ちゃんは楽しそうにあたしたちのグラスにシャンパンとコーラを注いでまわっている。
なんだか今夜の美弥ちゃんは女の顔をしている。あたしの知らない姿だよ。苦労してきた美弥ちゃんが幸せなんだから、あたしも大人のふりをして祝福してあげないといけないよね。
「みんなグラス持って」
お父さんの合図で乾杯してグラスを傾けていった。
「瑠花ちゃん、これから僕たち親子のことをよろしくたのむね。おい、祥大も挨拶して」
ふーん、祥大っていうんだ。
「あたし瑠花。昇華高校の2年生で17歳。今日からよろしくね」
いちおう最初だし、愛想よく自己紹介なんかしてみたりした。
なのに、こいつときたら、
「ふんっ、おない年か、めんどくせーな」
鼻であしらいやがった!
これがあたしのおない年の兄妹「祥大」だ。
最悪でなめた奴……。
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