二十七
耳から花の声を閉め出そうとした時、花の叫びが聞こえた。
「やめてくださいっ」
「ちょっとくらいならいいじゃねぇか」
「俺たちと遊ぼうぜ」
二人・・・いや三人か。
男に囲まれてる花の姿が想像できる。
私は考える間もなくその場を駆け出していた。
「離してくださいっ」
「嫌がってる顔もかわいいね」
痛い。
怖い。
かんざしを買いに町へ出てみれば、いきなり変な男の人たちに捕まって、なんてついてない日なんだろう。
そういえばこの前も、茶屋であんなことがあったし。
あの時は、すみれちゃんが助けてくれったけ。
そんなことを考えてるうちにも、男たちは無理やり私を連れ出そうとしてる。
やだよ。行きたくない。
助けてっ!!
「その手を離せ」
え。
目の前には、さっきまでそこにはいなかったすみれちゃんの姿が。
男の腕をつかみ私から引き剥がそうとしていた。
まるで、私の心の叫びを聞きつけたみたい。
「す・・みれちゃん??」
「花、大丈夫。私が助けるから」
そういって私のほうを振り返ったすみれちゃんの目は、いつもと違う光をおびていた。
「なんだこいつっ。いつの間に!」
「どこからきやがった!!」
男の声など気にせず、彼女は手につかんでる腕を握り締めていく。
「いてぇ!!離しやがれ!!」
「言ったはずだ。手を離せと」
そういって、男たちを睨みつける。
その瞬間男たちがうろたえるのがわかった。
彼女は一体何者だろうか。
「花に手だすな」
「女のくせに調子に乗りやがってぇぇ!!」
腕を握られていた男が、彼女めがけてこぶしを振りおろした。
「すみれちゃん!危ないっ!!」
私が叫ぶのと同時に、彼女は空いてるほうの手でいとも簡単にこぶしを受け止めると、私の腕から男の手を引き剥がしそのまま横へ男を投げ飛ばした。
「す、すごい・・・」
これが、すみれちゃんなの??
私が知ってる彼女は、店の裏で食器を洗ってる無口な女の子だった。
でも、今目の前にいる彼女は・・・・。
「まずは、一人」
「くそっっ!」
自暴自棄になった男たちが一気に殴りかかってきた。
三人も相手じゃさすがに・・・。
「数を増やしても、同じだ」
男たちのこぶしをさらりと交わし、開いたわき腹にこぶしをたたきつける。
足を払われ倒れる男。
顔に振り向きざまに蹴りを入れられ、後ろに倒れこむ男。
「これで三人」
あっという間だった。
「逃げるぞ」
「え?」
彼女に見とれていた私は、腕を引かれると彼女とともに走り出していた。
「まっ、待って。もう走れない」
息が上がり、足が動かなくなってきたところで、彼女は走るのをやめた。
「ここまでくれば大丈夫か。何もされなかったか?」
「う、うん。大丈夫」
心配そうに私を覗き込む彼女の目に、あの光は無かった。
「あ、ありがと!すみれちゃんのおかげで助かったよ」
そういって笑いかけると、彼女は困ったような顔をした。
「どうしたの?」
「いや、何でもない。それじゃ、私はもう行くから」
「待って。すみれちゃん!聞きたいことがっ」
彼女へと手を伸ばすが、後ろから来た人がぶつかり転んでしまった。
顔を上げたときには、もう彼女の姿は無かった。
だいぶ遅くなってすみません。




