二十五
これでいったい何人目だ。
目の前には赤い肉の塊が横たわっている。
さっきまで、自分と同じように動き、呼吸をし、生きていたモノだ。
「蓮魅の次は狼か」
剛は髪の毛の無い頭をかきむしった。
「いったい何が目的だ」
最近出てきた狼というやつは、最近奉行所を騒がせている。
蓮魅だけでも猫の手を借りたい今、狼は厄介なものでしかなかった。
それに加え、多くの役人が殺され、奉行所では総出で、お偉いさんとこの警備に借り出されている。
こういう俺も、そうそう狼なんかの捜査を外れて蓮魅を追いたいのだが・・・。
どうも、あっちはそうはさせてくれないようだ。
「剛さん!!」
一人で考え込んでいると奉行所に入りたての部下がやってきた。
「聞き込みしたんですけど、やっぱり誰も見てないそうで」
「だろうな」
狼は、新入りとはいえどかなりの手練れであることは確かだ。
こんな役人なんか秒殺だろう。
目撃者がいないのも当たり前だ。
「この人もお役人か何かですか?」
目の前の肉塊を見ながら、まだ若い青年は言う。
「ああ、こいつは上のほうのやつさ」
「上のほう?」
「秀、おめーには手の届かない上のところだ」
「はぁ?」
気の抜けた返事をする部下を横目に、また考える。
最近狙われているのは、役人ばかりだ。だが、共通点はそれだけであり、どいつもこいつも、年齢、役職、てんでばらばらだ。
何一つ、狼にたどりつく手がかりなんてものはない。
「狼も、蓮魅と同じでただ雇われてる殺し屋でしょうか」
「そうだといいがな」
蓮魅
こいつらもまた厄介だ。
俺がいくら探しても尻尾すらつかめない。
剛は、ひたすら殺された遺体の処理に明け暮れる日々に嫌気が差していた。
気づくとまた、髪の毛の無い頭をかきむしっていた。




