二十
「どこいってたんだ」
私を出迎えたのは青い顔をしたイサクだった。
「何をそんなに焦って・・・・」
イサクの後ろには、凛がいた。
「凛なんでここに?」
「あんたの保護者に現状報告してたところ」
「現状報告?」
「あんたがさらわれたってね」
なぜ、凛が知っている。
親父さんならともかくだ。
「どうして・・・・・・」
「コウが見てたんだよ。さらわれるところを。まあ、戻ってきてくれたからよかったけど。あんたにしちゃ気を抜きすぎたね」
「・・・・・」
言い返す言葉もない。
蓮鬽にとってあの失態は致命的だ。
「その様子だと、ひと暴れした感じに見えるね。どうせ、自力で逃げてきたんでしょう?」
「ま、まあね・・・・」
狼に助けられたなんて言ったら、イサクになんて言われるか・・・・・。
それどころか、話を聞きつけて親父さんにも問い詰められそうだ。
今のところは凛の話に合わせておいた方がよさそうだな。
「こんなに傷だらけになってよー」
未だに青い顔のイサクが傷だらけの私を見下ろす。
「まさか、心配してくれたのか?」
「うっ・・・・、か、頭になんて言われるかわからんからなっ!」
イサクは薬をとってくるっと言って、いそいそとその場を立ち去っていった。
「あんなこと言ってるけど。実は頭なんかお構いなしにお前を助けに行くとか言ってたんだから」
凛は楽しそうに言ってるが、やめてもらいたいものだな。
「蓮鬽っていうのはいつ死ぬかわからないんだ。いらん心配をしてる暇があったら、自分の身の安全に気をを使ってほしいものだね」
「あんた、そんなこと言ってたら復帰早々死ぬ羽目になるよ」
「はいはい」
そんなことは分かってる。
狼なんてものが出てくるのが悪いんだ。
一体あいつは何者なんだ?
考えれば考えるほどわからなくなる。
脇腹が痛むし、あんなことがあった後だから気が落ち着かない。
一休みしてからじゃないと頭も回らないだろう。
さっさと薬を飲んで寝た方がいいな。
「イサク、薬」
「人をこき使いやがって」
「悪いな」
イサクから薬を受け取る。
今日はイサクとやりあう気にもならない。
いや、その体力がないのだろう。
「やけに素直だな。頭打ったんじゃ・・・・」
「疲れてるだけだ。寝不足だし、和室借りるよ。凛も、帰っていいよ」
「刀また今度持ってこさせるから。しっかり休みなさいよ」
凛の声が聞き終わらないうちにふすまを閉めた。
イサクからもらった薬を飲むと、敷きっぱなしの煎餅布団に倒れこんだ。
イサクの匂いがしたが、この際気にしない。
それからすぐに深い睡魔に吸い込まれていった。




