十七
水の滴る音。
体全体が冷んやりする。
頭が痛い。ズキズキする。
きっと、薬のせいだろう。
重い瞼をゆっくり開けると、かすかにロウソクの火が見えた。
気を失ってからどれだけ経ったか分からないが、どこか別の場所に連れてこられたみたいだ。
両手は後ろで硬く縛られ、両足も同じく縛られていて身動きはとれない。
石の床に寝かされているようだ。
やがて、意識がはっきりして視界もよく見えるようになり、遠くの音も聞こえるようになった。
数人の男の声が聞こえる。
中には私を襲った奴の声も。
足音が次第に近づいてきた。
寝たふりをすると、戸を開ける音とともに数人の男達が入ってきた。
「こいつどうする?」
「売れると思うぜ」
「薬がすぐに効かなかった。それに、俺達の気配に気づいたんだ。只者じゃない」
「どっちにしろ、身分を吐いてもらわないといけないということか」
男の一人が背中を蹴った。
息が詰まる。思わず咳こんだ。
「起きてんだろ?お前どっから来た?幕府の差し金か?」
私は目を開けると、男を睨みつけた。
心の底から深く、鋭く。
「な、なんだよ。睨んでんじゃねーぞっ!」
怯えた様子の男は、今度は腹に蹴りをいれてきた。
身動きが取れないおかげでまともにくらってしまう。
「うっ…けほっ!」
吐血した。
「女のくせに生意気なんだよ」
「だ…まれ」
なんとか声を出す。
これが得策になるとは思わないが、何も言わないよりはましだ。
「こいつっ!」
「待て」
また蹴りを入れようとした男を制したのは、どうやら親玉らしき人物だった。
短く刈り込んだ頭、キセルのタバコをふかしている。
袖から見える腕には、ドクロの入れ墨が彫られていた。
「顔は傷つけるな。売りに出す」
「・・・分かりました」
売られるなんてたまったもんじゃない。
そろそろ逃げ出さないと…。
「その女さっさと薬で眠らせとけ」
親玉はそういうと部屋から出て行った。
「ちっ、ボコボコにしてやろうと思ったが商品なら仕方ないか」
にやにや笑う顔に腹がたつ。
その顔に一発殴ってやりたいが手が自由にならない。
「そんじゃ、眠ってもらおうか。目が覚めた時は、売られた後だ」
男達の品のない笑いが響く。
どうする。
眠ったら最後だ。
遠くへ飛ばされたら戻ってこれなくなる。
やがて、目の前に緑の瓶が近づいてきた。
「お休み。お嬢さん」
感想お願いします。




