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蓮鬽  作者: 夏月晴
17/27

十七

水の滴る音。


体全体が冷んやりする。


頭が痛い。ズキズキする。

きっと、薬のせいだろう。


重い瞼をゆっくり開けると、かすかにロウソクの火が見えた。


気を失ってからどれだけ経ったか分からないが、どこか別の場所に連れてこられたみたいだ。


両手は後ろで硬く縛られ、両足も同じく縛られていて身動きはとれない。


石の床に寝かされているようだ。


やがて、意識がはっきりして視界もよく見えるようになり、遠くの音も聞こえるようになった。



数人の男の声が聞こえる。

中には私を襲った奴の声も。


足音が次第に近づいてきた。


寝たふりをすると、戸を開ける音とともに数人の男達が入ってきた。


「こいつどうする?」


「売れると思うぜ」


「薬がすぐに効かなかった。それに、俺達の気配に気づいたんだ。只者じゃない」


「どっちにしろ、身分を吐いてもらわないといけないということか」


男の一人が背中を蹴った。

息が詰まる。思わず咳こんだ。


「起きてんだろ?お前どっから来た?幕府の差し金か?」


私は目を開けると、男を睨みつけた。

心の底から深く、鋭く。


「な、なんだよ。睨んでんじゃねーぞっ!」


怯えた様子の男は、今度は腹に蹴りをいれてきた。

身動きが取れないおかげでまともにくらってしまう。


「うっ…けほっ!」


吐血した。


「女のくせに生意気なんだよ」


「だ…まれ」


なんとか声を出す。

これが得策になるとは思わないが、何も言わないよりはましだ。


「こいつっ!」


「待て」


また蹴りを入れようとした男を制したのは、どうやら親玉らしき人物だった。

短く刈り込んだ頭、キセルのタバコをふかしている。

袖から見える腕には、ドクロの入れ墨が彫られていた。


「顔は傷つけるな。売りに出す」


「・・・分かりました」


売られるなんてたまったもんじゃない。

そろそろ逃げ出さないと…。


「その女さっさと薬で眠らせとけ」


親玉はそういうと部屋から出て行った。


「ちっ、ボコボコにしてやろうと思ったが商品なら仕方ないか」


にやにや笑う顔に腹がたつ。

その顔に一発殴ってやりたいが手が自由にならない。


「そんじゃ、眠ってもらおうか。目が覚めた時は、売られた後だ」


男達の品のない笑いが響く。


どうする。

眠ったら最後だ。

遠くへ飛ばされたら戻ってこれなくなる。


やがて、目の前に緑の瓶が近づいてきた。


「お休み。お嬢さん」



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