十六
太陽が人の多い表通りを真上から照らしている。
威勢のいい声、着物のこすれる音、人の匂い・・・・。
感覚が鋭い蓮鬽にとってここはあまり居心地の良いところではない。
裏道から行くと狼にでくわす可能性もあり、仕方なく表通りをいく。
足早に道を行きコウの言っていた傘屋を見つけた。
静かに角を曲がると視界の隅に小さな店を見つけた。
ゆっくり近づくと薄暗い店の中には誰もおらず、棚には薄汚れた食器が並べられていた。
武器を売っているところは幕府の見回りに見つからないようにするため、店には偽の品物を置くことが多い。
人の気配を感じ振り返ると男が立っていた。
白い肌に骨ばった頬、痩せた体はまるで死人のようだ。
「ここに何の用かね。御嬢さん」
かすれた声からは、かすかに煙草の匂いがする。
煙草は高い代物でなかなか手に入らない。
武器商人は武器を打った代わりに煙草などの高価な物と交換することが多い。
ということは、ここで武器を打っている可能性が高いということだ。
いちかばちか・・・・。
懐からあのくないを取り出す。
「これに見覚えは?」
武器商人は信頼を得るため顧客の情報を他人に教えることはまずない。
「さあ」
案の定、男は否定した。
それでいい。
私は、今まで培ってきた観察力を使い男の動きを瞬時に見た。
一瞬揺れる瞳、上下する肩、胸の動き・・・・。
すべてを見て男が嘘を言ったことは丸分かりだった。
「そうですか。用はこれだけです」
「物騒なもの持つんじゃないよ、御嬢さん」
男は安心したように頬を緩めた。
これで、狼がここで武器を調達してることは分かった。
あとは、張り込みをして狼が来るか確認すればいい。
帰ろう。
そう思った時・・・・。
男が不意に口の端を釣り上げるのが見えた。
とっさに振り返り身構えると、両腕に衝撃が走り体が飛んだ。
棚に打ち付けられ、食器が落ちる。
割れた食器が体に傷を作る。
「っつ・・・・」
起き上がると、そこには二人組の男がいた。
「困るんだよ。いろいろ探られると」
「彼らは護衛だよ。合図をすれば助けてくれるんだ」
かすれた声で自慢げに話す男。
どうやら、そうとう金を払っているようだ。
痩せた男に油断しきっていた自分が馬鹿だった。
まずは、逃げないと。
「そこをどけ」
くないをかざすが男たちは動こうとしない。
「やめときな、御嬢さん。逃げられないよ」
「どういうこ・・・・」
視界がかすむ。
体に力が入らず、私はそのまま倒れた。
「な・・に・・・・を・・し・・た」
声が出ない。
「さっき蹴った時に薬を打たせてもらった。しかし、まだ意識があるとはな」
いつの間に。
かすむ視界の中で男達が近づいてくるのが見えたが、体は動かない。
意識が遠のきそのまま深い闇に落ちていった。
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