十五
熱く熱せられた鉄の塊に金槌が打ち付けられる音が、リズム良く鳴り響く。
熱気に満ちた部屋の中で、店主が刀を作っていた。
その一振りに、店主の魂が込められているかのようだ。
やがて、鉄の塊がスラリとした刀に変わっていく。
命を宿したように光る刀が出来上がっていった。
その過程を戸口の側で見ていた。
ここの店主、凛が打つ刀は蓮鬽から信頼を得てる。
それだけ、腕が良いのだ。
女でいて、江戸一番の刀打ち。
刀狩りのご時世にこうやって、刀をつくれるのもその腕があってのこと。
幕府から直属の命により、幕府専用の刀を作ることを任されたのだ。
しかし、その裏では私たちの為に刀を作ってくれている。
だから、私たちは同じ刀をもった人間と戦っていることになる。
凛の本当にすごいところは、個人の能力に合わせて、最大限の力を発揮できる刀を作ることだ。
作業を終えた店主がようやく私に気がついた。
「なんだ、来てたのか」
「相変わらずいい刀を打つね」
「そうかな。それよりも、復帰おめでとう」
「ありがとう」
彼女には一人だけ助手がいる。
名前はコウ。
背が低い、まだ私よりニ、三歳年下の男の子だ。
「コウは?」
「買い出しに行かせてるよ。こっちも終わったし、あんたの刀でも作るか」
凛は材料が積まれている棚に向かった。
「あんたのとこの親方から頼まれてるよ。どんな刀がいい?」
「少し軽いのがいい」
「強度は前より低くなるけどいい?」
強度が低くなるのは避けたいが、仕方ない。
もし、今度またあの男にあったらもっと速く動かないといけない。
そのため、刀を軽くしなければいけなかった。
「いいよ。あと、聞きたいことがあるんだけど」
「何?」
凛は材料を選ぶ手を止めず話してる。
「このくない見たことない?」
それは、昨日あいつが使っていた物だった。
何かヒントにならないかと、念のため持ってきておいたのだ。
凛はくないをじっくり見た後、横に首を振った。
「これ。前に親方も見せてくれたよ」
「親方が?」
「うん。だけど、見に覚えはなかったんだけどね」
「そうか」
「話は聞いてるよ。狼だっけ?あんたも気をつけなよ」
「うん」
「それじゃ、打ってくからそこら辺で見といて」
凛に言われた通り部屋の隅に移動すると、やがて鉄を打つ音が聞こえてきた。
「ハルさん、おはようございます!」
声がした方を見ると、コウが立っていた。
「おはよう」
「刀作りに来たんですよね。あれ、それは?」
コウの視線の先を辿ると、手に持っていたくないだった。
「これのこと?」
「はい。それと同じ物をさっきも見かけたんです。ハルさんも買ったんですか?」
偶然というべきなのか。
しかし、手掛かりをつかめた事には間違いなかった。
「どこで見たの?」
「表通りの、傘屋の横にある路地の所です」
「近いな…。凛私言ってくる」
「わかった。だけど、見るだけよ!もしかしたら、狼がいるかもしれないし。それに、あんた今丸腰だからね」
「わかってる」
「刀は、出来たらコウに届けさせるよ」
「ありがとう。それじゃ」
私は、くないを着物の中に入れると走り出した。
展開が、速いかも…。
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