十
刀を引こうとした時、かすかな気配を感じ、とっさに身をひるがえした。
その瞬間、足元にくないが突き刺さる。
「誰だ」
暗闇に目を細めると、やがて人影が見えてきた。
「そいつは俺の獲物だ。手を出すな」
低い声が闇にこだまする。
「あんた、誰?」
人影は、答えない。
同業者であるが、獲物が被ることは考えられない。
なぜなら、殺し屋をすべて仕切ってるのが、あの白鬼だからだ。
ということは、新しい殺し屋グループができたのかもしれない。
でも、そうなると白鬼の情報網に何かしら引っかかるはず。
だとすれば、私に一つや二つ言って・・・・。
ふと、白鬼の不敵な笑みが浮かんだ。
これは、何かありそうだ。
「お前、引かないつもりか?」
気付くと、人影は10メートルほど先にいた。
顔には、顔を隠す為の布が巻かれてる。
体格的、声的に男だろう。
「これは、仕事だからね」
笑いながら答える。だが、あいつからは、絶対に目を離さない。
一番厄介なのは、殺し屋同士の戦いだ。
新手でない限り、気は抜けない。
あいつは・・・・。手練れのようだ。
周囲に張り巡らした殺気が尋常じゃない。
どうしようか悩んでる間に、後ろで駆けてく足音がした。
「しまった!」
すっかり忘れてた、与吉の存在。
私が追おうとしたその時、
ヒュンっっ!!
と、何かが頬をすり抜けていき、そのまま与吉の背中にささった。
与吉はその場に崩れ落ちる。
よく見ると、くないだ。
私の頬を血が伝う。
振り返り、あいつをにらみつけた。
「殺し屋に背中を向けるなと、教わらなかったのか?」
どこか楽しげな口調に、腹が立つ。
くないの刺さり方、位置からして与吉は死ぬだろう。
「あんた、上手いんだね。人殺すの」
男に、冷たい視線を向ける。
「これじゃ、仕事は終わりだ。あんたの獲物だったのかは知らないけど、私はもうここに用はないから好きにすれば?」
刀を鞘に納め、帰ろうとした。
「おい。人の獲物狙っといて帰れると思ってんのか?」
男はそういうと、くないを投げつけてきた。
すんでのところでそれをかわす。
「っつ。あんたと争う気はない」
だが、男は聞く耳持たず。
「それはそっちの都合だ。悪いが、邪魔されたからには生きて返さない」
再びくないが飛んでくる。
それも、軽々と避ける。
「そんなんじゃ、私を殺せないよ」
男は、あきらめたのかくないをしまった。
だが、背中から刀を取り出した。
どうやら、背中に鞘を括り付けてあったのだろう。
「まだこれがある」
そういうと、刀を握りしめ駆けだしてきた。あまりの速さに、鞘をつけたまま刀を制す。
「っつ・・・」
弾き返し、後ろに跳びさる。
「なかなかいい腕してるな」
男は、笑ってるようだ。
「あんたこそ」
私は、鞘から刀を抜くと中段に構えた。
目は、しっかりと男をとらえる。
こうなったら、どうにかして切り抜けないと命は無い。
夜の静けさが二人を包み込む。
かすかに、水が地面を打つ音がする。
ピチョン、ピチョン・・・・
ダッッ!!
男がさっきと同じように駆け出してきた。
その速さに、残像が残る。
何とか目で追い、刀を防ぐ。
キンッッ!!!
刀が打ち合う音が響く。
下から、横から、上から・・・・。
絶え間なく、刃が襲い掛かってくる。
紙一重のところでかわし、刀で受けるが追いつくのにやっとだ。
2年振りに相手をするのが同業者とは・・・・。分が悪い。
「くっ・・・」
何度目かの攻撃を受け、息を吐く。
息をする暇がないほど、相手の斬撃は早い。
「くそっ!」
刀を上にはねのけ、男の懐に刀のみねを打ち付ける。
「ぐっっ!」
手応えはあった。ほっと気を抜いた瞬間、腹を蹴飛ばされた。
あまりの衝撃に受け身も取れず、石垣に体を打ち付けた。
「っっつ・・・」
息が止まる。
視界が回る。
やがて、男が近くにやってきた。
「遊びはここまでだ」
月の光を浴びた刀が、ゆっくりと振り上げられる。
その銀の輝きが眩しい。
「死ぬ・・・の・か」
私は、ゆっくりと目を閉じた。
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