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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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青炎の魔術師

青炎の魔術師~どうやら前世の能力を引き継いだまま転生したのでもう一度伝説になることにしました~

作者: Mini
掲載日:2026/04/18

 青炎の魔術師……俺は伝説になった。

 混沌の世界、国を救い、世界を救った。

 青い炎が平和をもたらし、もう二度と地獄のような世界は訪れないだろうと……そう思っていた。

 が、そんな俺にも一つの病気……呪縛を抱えていた。

 それは、寿命であり……俺の青炎の副作用だった。

 青炎を使えば使う程体が燃えるように熱く、寿命を削って生きてきた。



 彼は、世界を救った日に、死んだ。


「おい……嘘だろ」

「どうして……」

「あり得ない」


 周りにいた人たち、そして世界中の人々は逝去を聞いたとき驚いていた。

 世界を脅かす存在、魔王と呼ばれるものを倒し……そして俺は青い炎に包まれながら死んだ。

 悔いはあるかって?

 そんなもの、あるに決まってる。

 もっとこうすればよかったなとか、自分が死なないようにすることもできたかもしれない。

 気づいたときにはもう遅かった。どうあがいても助からない。それが分かったから割り切って自分のやるべきことに集中した。

 もし、俺が生き返るという奇跡が起きたりすれば……次は必ず死なないようにすると、そう考えるだろう。

 だがもう世界は救った。

 これで人々は幸せになるんだ。俺の死なんてそのうち忘れて笑って暮らす。

 それでもいいと思っていた。伝説なら伝説らしく、潔く死ねばいいと……そう思っていたのだが。



「モアニ様……生まれましたよ。元気な赤ちゃんです」

「可愛い!黒い髪の毛にくりくりな青いお目目。」

「今日からお姉ちゃんよ。よかったわね」

「嬉しい!」

「よく頑張ったなモアニ」

「あなた……あなたが、名前を付けてくれないかしら?」


 母親に抱かれる俺。言葉を発しようとするが発することが出来ない。

 お姉ちゃん?何を言っているんだ?名前?

 いや違う……これは……

 俺はすぐに理解することが出来た。


(もしかして、転生したのか?)


 死ぬ間際の記憶も鮮明に覚えている。魔術を使っていた感覚もこの手に残っている。

 別にあのまま死んでもいいとも思っていた。それなのに————


 父親らしき人物は赤ん坊に近づき、優しく名前を言った。


「お前の名前は、レイ。レイ・ノーヴァだ」

「レイ……すごくいい名前ね」

「ああ……今日からこの四人で、幸せに暮らすぞ」



 そしてあれから五年が経過した現在—————————


「お姉ちゃん!待ってよ!」

「レイ足あそ~い!早く早く!」


 姉、ミア・ノーヴァに走ってついていくレイ。

 丘のふもとに到着した二人。ミアはその先に広がる景色をキラキラした目で見ていた。


「私、大きくなったら冒険者になって……伝説の魔術師になりたい!」

「お姉ちゃんなら、きっとなれるよ!」

「そうだといいな~!」


 キラキラした目で話すミア。それを横目にレイは心の中でつぶやいていた。


(その伝説の魔術師は俺なんだけどね)


 だが当然このことを言うわけにも、悟られるわけにはいかない。

 どうやら俺は伝説の魔術師と1000年以上たった今も語り継がれているらしい。

 生まれた家系はごく普通の魔術師の家系。

 この世界にもさまざまな役職が存在した。剣士や呪術師、魔術師に聖職者。語りだしたらキリがないほどに増えていた。

 ミアは右手を前に出して魔術を出そうとするのだが……。


「ゲホッ……ゲホッ……」

「大丈夫?お姉ちゃん」

「うん……やっぱり、ダメなのかな。私……魔術師になれるかな?」


 ミアは咳き込み肩を竦めながら言う。

 レイは背中をさすりながら答える。


「絶対大丈夫!お姉ちゃんならなれるよ!いっぱい練習頑張ってるじゃん!」

「う……うん」


 姉のミアは体が弱いわけじゃなかったが、魔術を使おうとすると途中で邪魔されるように魔力の乱れが生じ、途切れてしまう。

 レイは魔術に関して熟知しているのだが、姉のこの原因に関しては未だにわからなかった。


(俺にもわからない魔術が存在するのか?いや、まだ5年しか生きてないけどどれも1000年前に存在する魔術ばかりだった)


 もちろん1000年以上も経っているんだ……新しい魔術の一つや二つ、あってもおかしくない。

 レイは顎に手を当てながら考えていると……。


「レイってたまにすごく怖くなるよね」

「……!?それって、どういうこと?」

「なんか大人びてるっていうか……私もう少しで十歳になるのになんか落ち着いてるっていうか……」

「そ、そんなことないよ!?」

「それに、魔術の才能もすごいし」


 正直、何も言えない。2年前……レイは家から少し離れた場所で試しに魔術の詠唱をしてみたところ……ものすごい勢いで発動され、それを姉に見られてしまった。

 その場所は姉もよく魔術の練習で使う場所だったので仕方がなかった。

 青い炎は出せる……出せるが前世の痛みを思い出すと怖くてできない。

 子供の時は皮膚が弱いというのもあってあまり出さないようにしようとしているのだ。

 ミアは後ろで手を組み覗き込むようにして話す。


「ねぇ、もしかして私達に隠してることとかあったりする?」

「ないよ!あるわけないじゃん……魔術の事に関してお父さんとお母さんに黙っててくれてるし」

「そうだよね?ならいいんだけど!」


(……毎度思うけど、申し訳ないなぁ)


 魔力も当然隠している。きっと今全部の魔力をむき出しにしたら泡吹いて倒れると思う。

 それをすればミアが泡を吹く前にレイの体がもたずに爆散してしまう可能性の方がもっと高いのだが、当の本人もそれを理解している。

 そう言うのもあって力を抑えているのだ。

 ミアは丘の向こうに広がる景色を見ながら、レイに聞いた。


「レイはさ……やっぱ将来魔術師になりたいなって思うの?」


 その問いに、レイは「ん~」と唸りながら空を見上げる。


「今は考えてないかも。楽に生きれたらそれでいいかなって」

「ふ~ん……レイなら伝説の魔術師になれるかもしれないのに」

「それはお姉ちゃんがなるんでしょ?」

「私は()()()なりたいんだけどなぁ」

「……ッ!?」


 ミアの言葉に、レイは驚く。

 まさかそんなことを言うとは思わなかった。

 それに、なんだこの感情は……。

 少し嬉しいとすらも思ってしまった。

 本当にレイは楽に生きれればいいと考えていた。

 二回目の人生なんて普通はあり得ない。だったら次はのんびり暮らそう。そう思っていた。

 けれど、ミアは……レイの姉は違ったのだ。

 ミアはそのまま丘の向こうを眺めながら言う。


「後もう数年したら、冒険者試験を受けれるでしょ?それまでに魔術も使えるようになって、試験に受かったらパーティに入って、前衛で戦ってる剣士の援護をできる魔術師になりたいの」

「いいじゃん」


 本当に心の底からそう思った。

 血はつながっているけどあまり家族として見れないレイだったが、弟として応援したいと思った。

 ミアは視線を落としてもじもじしながら言う。


「そのパーティにレイも入ってほしいんだよね」

「でも5年も年が離れてるから……かなり遅くなるよ?」


 冒険者試験を受けれるのは15歳から。ミアはあと五年。レイはあと十年もかかる。

 そんなものは叶う確率の方が少ない。


「それでも、私はレイと一緒に冒険したい」


 姉の言葉に、レイは笑みを浮かべる。


「一緒に出来たらいいね」

「絶対できるよ。ま、レイが回復術師だけどね!」

「え~!一緒に戦おうよ!」


 二人は笑って将来の事について話していた。

 姉は自分に魔術の才能がないと理解しながらも努力をし続け、レイはそれを見守っていた。

 


 そこから5年の月日が経過し……ミアは家を出て行くことになった。

 母親と父親は涙を流しながら見送る。


「ミア……風邪ひかないようにね?」

「うん!ありがとうお母さん」

「ミア……ミア……おどうざん……ミアが立派になっでうれじいでず」

「お父さん泣きすぎ」


 涙で顔がぐちゃぐちゃになる父。

 これでお別れ……というわけではないが、一つ大人になったという証明。

 それが冒険者試験。受けれる年齢になると世界中の人間たちはその試験に受けに行く。

 今では基本になっているらしい。

 ミアは弟のレイに視線を向ける。


「私、待ってるから」

「俺も15歳になったらすぐに冒険者試験を受けに行くよ」

「あんたなら、もしかしたら大きいギルドから声がかかったりするかもね」

「そんなの全部蹴って姉さんのパーティに入るよ!」

「ふふっ、楽しみにしてる。それじゃ、行ってきます」

「「「行ってらっしゃい」」」


 姉は笑顔で家を去っていった。姿が見えなくなるまで家族三人で見送る。

 背中がどんどん小さくなっているのを見ながら、レイは言葉をこぼした。


「父さん、母さん……姉さん、すごいよね」

「?ええ、そうね」

「なんたって父さんの子だからな!」


 この五年間でかなり成長した。

 魔術も使えるようになったが、魔力を使いすぎると咳が出てしまう。

 結局、その原因は分からずじまいだった。

 そして、レイも姉さんと同じ冒険者になるのを夢見て(?)魔術を発動するときの魔力量を少しずつ上げていく訓練をしていた。

 今では全盛期の半分を使っても体が悲鳴を上げることなく使える。

 驚くことに、回復魔術を全身にフルで使った状態で青炎を使うと体は痛くならない。

 以前の体はそれが叶わなかったが、魔術が進化して言ってるのかあるいは体が適応しているのか……どちらにせよものすごいありがたい事だった。


(俺も頑張らないとな)


 レイは自分の手を眺めながらそう決意する。

 冒険者試験に行くとき変に怪しまれないようにするには魔力の制御。これを重点的に行う必要があった。

 それに青い炎……それを扱える術師も限られる。それこそ伝説の青炎の魔術師と疑われてしまう。

 それだけは避けたかった。

 姉さんが家を出たその日から、毎日毎日魔術の鍛錬をしていた。

 母さんも父さんも仕事に言っているので魔術を隠さず使えるという日常がとても楽というのもあってか、すぐに魔力制御はできるようになった。

 生前使っていた魔術の余裕で使え、正直この年齢でそんじゃそこらの魔術師には負けない程に成長していた。

 自分の掌に青い炎をぼっと出しながら呟く。


「つっても、俺よりつえぇ人間なんていねぇだろ」


 この時のレイは……悲劇が起こることをまだ知らない。



 さらに5年の時が経過し、レイが15歳になり……冒険者試験を受けれるようになった。


「お誕生日おめでとうレイ!」

「おめでとう!」

「ありがとう、父さん、母さん」

「それで、冒険者試験……行くんでしょ?」

「うん、姉さんとの約束があるから」

「そうね。あなたがそう言うなら否定はしないわ。」

「やるからには全力でやれよ!お前が強いってのは俺達も十分わかってる!だが自分の力を過信しすぎるな!」


 父さんはいつになく饒舌で話していたが、レイは聞き流しながら玄関に足を運ぶ。


「それじゃ、行ってきます」

「行ってらっしゃい」

「レイ~~~!!あいじでるぞ!」

「はいはい。俺も愛してるよ」


 五年前同様、父さんは涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら見送ってくれていた。

 母親はそれにもらい泣きをして最後に抱きしめてくれた。

 それがとても、温かくて心地よかった。



 冒険者試験の会場についたレイ。

 ものすごい数の受験者が来ていた。思わずレイも声を上げてしまう。


「すっげぇ人数……って、これなんだ?」


 冒険者試験の前には立派な銅像が立っていた。

 フードを被っていて、手には炎らしきものを宿している人物。

 レイはこれに既視感を覚えていた。


(あ、俺だ。まじかこんなんまであるのか)


 生まれてから街に出ていなかったレイ。両親から伝説の魔術師がいて~というのは耳にしていたが恥ずかしかったのであまり聞かなかった。

 しかし、こうなっているとは想像もしていなかった。

 ぼけ~っとその銅像を見ていると後ろから話しかけられレイは振り向く。


「かっけぇよな!これ1000年以上前に世界を救った伝説の魔術師らしいぜ!」

「う、うん」


(目の前にいるよ。伝説)


「俺はこの人みたいになるのが夢なんだ!」


(だからいるよ。伝説はここにいるぞ~)


 レイは軽くジト目をしながらウキウキで話し男子を見ていた。

 ここにきているのはほとんど同い年。きっとみんなも15歳の誕生日を迎えたらここにきているのだろう。

 だが中には中年くらいのおじさんがいたり、色々な年齢の人たちがいるのも確かだった。


(冒険者試験を受けれるのが15歳ってだけで強制じゃないもんな。そりゃ色んな人がいて当然だ)


 うんうんと頷きながらあたりを見渡していると、がたいのいいつるっぱげの人がこちらへと近づいてきていた。


「この伝説の魔術師とかいう奴、ほんとに実在したか怪しいよな。だが俺は逆にそれが良いとすら思ってる。伝説は伝説らしく架空の存在であり続けてほしいからな」

「そ、そうですか」


(ごめんね。架空の存在じゃなくて)


 心の中で少し悲しくなりながら謝っていると、受付の人っぽい人が声を上げた。


「会場はこちらで~す!おさないで!ゆっくりで大丈夫ですから!」


 その声に全員が走る。急がなくても全員同じじゃんと思いながらレイはゆっくりとその会場に足を運ぶ。

 会場の場所に到着すると、スタジアムのようになっており……観客席がパンパンに詰まっていた。そしてスタジアムの真ん中には一つの扉が立っていた。

 受付の人はその扉の前に立ち、ルール説明を行っていた。


「それでは!今から冒険者試験を開始いたします!ルールは至ってシンプル!この扉の向こうに様々なダンジョン、そして魔物がいます!それらを多く倒し、いち早くゴールに向かう事!この扉をくぐったら冒険者という自覚をもって行動してください!手を組むのも、裏切るのも自由!殺しは即失格です!」


(なるほどな……この観客はギルド人間がほとんどか。この冒険者試験でいい成績の人間を引き抜くって感じかな)


 レイの推測は正しかった。

 観客席に座っている人間の胸元にはシンボルのようなものがあり、それらはおそらくギルドメンバーだと象徴するもの。どれだけいい成績を残しても姉のパーティに入ることは決めているので適当にやろうかと思うのだが、もし仮に姉が強いギルドに入っていたら自分がそこそこの成績だった場合声がかからない。


(それだけはまずいな。やはりある程度は実力を見せておいた方がいいか)


 レイはそう判断し、最速でゴールに向かうと決意する。

 そして、それとほぼ同時に受付の人が開始の合図を出す。


「それでは~!よ~い!スタート!」


 合図がなり、全員が我先と向かっていく。

 レイは魔術をその場で利用し、最速で扉の中へと入っていく。


「……?あの子……」


 会場の数名……おそらくギルドマスターだろう。

 今のレイの行動に気づいていた。



 ダンジョンの中は様々だった・最初は森林のようなもので次々に進んでいくとマグマ層があったり、暗い層があったりと様々だった。

 襲ってくる魔物を重力魔術で押しつぶし、どんどん先に進んでいく。

 会場の観客たちはレイの強さに驚いていた。

 15歳であの技量……そして言わずもがなダンジョン内の戦闘は全てモニターで映し出されている。


「とりあえず、ここがボスって事でいいのか?」


 レイはボスらしき部屋の前へと到着し、その扉を開けようと手をかざしたところで後ろから魔術を飛ばされそれを反応でよける。


「これを避けるかよ……完全死角だったろうが」

「悪いな。俺は魔力には敏感なんだ」


 レイはにやりと笑みを浮かべながら言う。すると魔術を飛ばしてきた男は焦りを見せながら提案をしてきた。


「このボス、一緒に倒さないかい?」

「なんでだ」

「ほら、俺も早くゴールしたいしさ!ね!別にデメリットはないはずだよ!」

「魔術を撃っておいて信じれるわけないだろ」

「……ッ」


 レイ自身誰と組もうがどうでも良かったが、これはいい気がしない。

 せっかく興が乗ってきたところだっていうのに阻まれ挙句の果てには一緒に組もう。

 そんな馬鹿な話があるか。


「悪いが、その話は断らせていただく」

「……ッチ、ガキのくせに。こっちは二つ上だぞ?そっちがその気なら力ずくでやるしかないな!」


 男はそう言いながら剣を抜き、そこに魔術を施しながら接近してきていた。

 迫りくる男を睨みつけながら、レイは呟くように言う。


「別に、殺さなきゃいいんだっけか」

「……ッ!?」


 瞬間、男は吹き飛び反対側の壁に激突し気を失う。

 レイはその様子を見て頭を掻いていた。


「ただの重力魔術でこれかよ。張り合いねぇな」


 冒険者試験が始まってから重力魔術以外使っていないレイ。

 特に理由はない。気分でどの魔術を使うか決めただけ。

 冒険者試験というだけで所詮は模擬戦の延長みたいなもの。どれも張り合いがない。

 ここまでついてきた冒険者に対して少しだけ期待したが、それも一瞬で終わってしまった。

 退屈だと感じながらレイはその扉に入る。

 

「……ッ」


 雰囲気が一気に変わった。

 今までとはまるで違う。ここからが本番だといわんばかりの圧迫感。

 レイは笑みを浮かべこれを待っていたかのように両手に魔術を構える。


「なるほど……こいつだけは別格って事か」


 出てきたのは魔物の中でも最高クラス。ドラゴンと人間が混ざったようなキメラだった。

 基本は人間の姿なのだが、頭には角が生えており……尻尾も生えていた。


 瞬間……レイの体は勢いよく飛ばされてしまう


「ってぇ……なるほどな」


 今の一撃で理解した。こいつは冒険者試験で出していい魔物じゃない。

 俺以外なら今の一撃でやられていただろう。

 壁に激突する瞬間、レイは水の壁を作り衝撃を和らいでいた。

 それでも衝撃が伝わってくるという事は相当な一撃だったというわけだ。

 準備体操をするように首を鳴らし、体をほぐす。


「そんじゃ、次は俺の番だな」


 そういいながらレイは走り出す。

 風魔術でスピードを上げながら、雷魔術で敵を拘束。

 そして体全体を重力魔術で覆い威力を上げて攻撃をする。

 敵の体はへこみ、確実にダメージは入ったと思ったその時……雷魔術の拘束を抜け出し蹴りを入れる敵。

 魔力の動きで察知できたレイはその攻撃をよけ、雷魔術で生成した剣を片手に接近した。

 敵はそれを尻尾で受け止める。


「なるほど。これもダメなのね」


 少しギアを上げようと魔力を込めるのだが、その直後に口からブレスが飛んでくる。


「……ッ!?」


 重力魔術で体を強制的にしゃがみ込ませ、そのブレスを避ける。


「あっぶねぇな……って、おいおいおい……マジかよ」


 人間の形をしていたドラゴンだったが、視線をあげ敵の方へとむけると人間の体から一変。龍の姿になっていた。


「第二ラウンドってわけね……そんじゃ俺も今度こそギアを上げるぞ」


 制御していた魔力のリミッターを数個外し、段々と禍々しい魔力へと変貌する。


(正直ここでやるつもりはなかったけど、楽しくなってきたし……この際どうでもいいや)


 雷魔術で剣を作り、もう片方の手で氷魔術で剣を生成。二刀流で挑もうとしていた。

 互いに見合い、先に仕掛けたのはレイ。

 自分の体の周りに氷魔術を発動させ攻撃をする。

 龍はその場から飛ぼうとせず、ブレスで氷魔術を弾こうとする。

 レイはそれを狙い口元に自ら向かう。

 そして空いている口に右手をかざし、水魔術を発動。


「どうだ?苦しいだろ?」


 お腹も水でパンパンになっているのだが、龍はその水魔術を利用してブレスを吐いてきていた。

 先程は炎のブレスだったのだが、水魔術を流し込んだせいなのか氷のブレスへと変貌する。


(ッチ、もうこのままじゃらちが明かねぇ。あれを使うっきゃねぇか)


 次々に吐かれる氷のブレス。レイはそれを避けながら機会を伺っていた。

 ブレスを吐いた後の好きを狙い、レイは走り出す。

 鋭い爪をこちらへとむけられ、それを振りかざされながらも避ける。

 そしてレイは龍の懐に侵入し、腹部に触れて発動する。


「ごめんな。けどあんま長く戦ってると他の奴らも来ちゃうから」


 そう言いながら青い炎を勢いよく出し、龍の体全体を青い炎が包み込む。

 暴れまわる龍が次第におとなしくなり、バタン……と音を立てながら地面へと倒れこむ。

 丸焦げになった龍に乗りながら、他の参加者たちが到着したのを横目に……


「ごめん。ボス倒しちゃった」


 観客にいた全員、そしてその場に駆け付けた参加者たちは皆驚き、全員の声で会場が揺れていた。



「見事!一番最初にゴールしたのはレイ・ノーヴァさんです!そして今、レイさんをスカウトするため次々とギルドマスターから申請を受けています!」

「なんだあいつやべぇ!」

「ほんとに15歳かよ!」

「しかも最後の青い炎!まるで伝説の青炎の魔術師を見てるみたいだった!」


 会場に戻るや否や、レイは少しやりすぎてしまったと後悔する。

 全員の歓声。そしてギルドからの誘いがとんでもなく多い。しかしレイは久しぶりに心置きなく戦えたことにすごく脳汁が溢れだして仕方がなかった。


(きもちぃ~……声援も悪くなかった。)


 そしてレイは会場から離れる。



 廊下を渡り、壁にもたれかかっている一人の男に目が入る。


「君、いったい何者なんだい?かなり戦闘慣れしているようだったけど」

「父が色々と教えてくれたんですよ!それで……ですかね?」


 やはり、やりすぎてしまっていた。

 胸元には金のバッジ……ギルドマスターだ。

 嫌な奴に目を点けられたなと思いながらその場を離れようとするのだが……


「君、うちに入る気はないかい?この世界でもっとも強いといわれているギルドだ。君にはそこに入る資格がある」

「大変嬉しいお誘いなのですがすみません。もう入るギルドは決めておりますので」


 レイは頭を下げながら丁重にお断りを入れる。

 ギルドマスターは少し驚いた様子でレイを見るが軽く咳払いをして口を開いた。


「どのギルドに入ったのか、教えて貰ってもいいか?」

「それが、ギルド名は分からないんですよ」

「は?」

「実は姉の所属しているギルドを探していまして……知りませんか?ミア・ノーヴァという20歳の女性を」


 レイがそう言うと、ギルドマスターは視線を逸らし……深刻そうな顔になっていた。


「報告がいっていなかったのか……」

「報告?」


 首を傾げ、聞き返す。

 この時からもうすでに、胸騒ぎがしていた。

 ギルドマスターはレイの方に視線を向け、真摯に告げる。


「落ち着いて聞いてくれ……君の姉、ミア・ノーヴァは2年前に亡くなったよ。うちのギルドメンバーだった」

「……は?」


 突然の報告に、頭が真っ白になった。

 そこからの会話はあまり覚えていない。

 誰かに殺されたか、魔物に殺されたのか……遺体の回収もできなかったらしい。

 レイは冒険者会場の裏のベンチに座り、視線を落とす。


「姉さんが……亡くなった?どうして————」


 あり得ない。

 そんなこと、あってはならない。

 信じたくない。嘘だ。

 そう思っても、ギルドマスターの表情が浮かんでしまう。

 きっと本当なのだろう。

 涙なんてもう出ないと思ってた。二度目の人生で、別に気楽に生きていければいいと……そう思っていた。でも姉のミアは弟であるレイを第一に考えてくれていた。それを知っていたし、ミアが姉として好きだった。

 気が付けば涙がぽろぽろと頬を伝う。


「許さない」


 その原因が何であろうと、許されるべき行為じゃない。

 きっと、転生してきた理由はこれなんだと理解する。

 そして……レイは拳を握りながら……


「姉さんを救うためならなんだってしてやる。伝説の魔術師にでも、悪魔にでも……なってやる」


 この時、もう一度伝説の魔術師になると心に誓った。


 その翌日、誘ってくれた世界最強のギルドに加入した。

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― 新着の感想 ―
めっちゃ面白いです!!是非続編を出してほしい。youtubeの方で知ってリンクで飛んできました。個人的に実力隠している系が好き。青炎の魔術師や神王のやつが好き。恋愛系だとヤンデレとツンデレが好きです。…
2026/05/08 19:02 井守 佳月
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