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餡子の詰め合わせ  作者: 江戸前餡子


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1/1

大型新人の大型遅刻ドラマ

「おーい!あの新人今日も遅刻かよ!」

「課長、落ち着いてください!

 教育係の私が、よーく言い聞かせますので!」


 その時だった――


 「ごめんさーーーーい!!!」


 ドアが勢いよく開き、新人君がどけ座のままスライディングしてくる。

 見事などけ座。日に日に磨きがかかり、俺は逆に感心した。


「今日もよく滑るなぁ……って、そうじゃなくて、

 お前さぁ。学生気分じゃ困るよ。

 分かってる?自分のしている事」

「じっ、実は。理由がありまして」


 ゆっくりと立ち上がる新人君の表情は深刻そうで、俺は固唾を呑む。

 

「そ、そうだったのか。言ってみろ」

「今朝、駅でずぶ濡れの少女に会ったんです」

「今日は雲一つない晴れだが!?」

「僕も不思議だなって思ったんですよ。

 しかも、その少女、赤い傘を持ってて。

 "実は私はスペースポリスに追われてる、

 ウナギと50歳B型静岡県に住む田中さんの間に産まれた、

 子供に転生した、元天の使いで……"って」

「何その設定の量、幕の内弁当かよ!」

「僕を見る度に、"あなたが元の世界に戻る鍵です"って言うんです」

「それSFなの?ファンタジーなの?」

「で、消えました」

「雑!最後なんで考えるのやめたの?」


 と、その時。怒りがピークに達した、新人君の教育係が、

 「言い訳だろ!作り話なら、もうちょっとリアリティーのある話にしろや!」なんて怒声を飛ばす。


「すみませんでした!今後ないように気を付けます!」

「え~……」


 少女は何者なの?てか鍵ってなに!

 赤い傘は伏線なの?


 その日、俺は仕事に集中できないどころか、夜も眠れなかった。


〇 〇 〇


「ごめんなさーーーー!!!」

「おう!新人君、待っていたよ。

 今日はどうしたんだい?」


 後ろに置いてある、昨日の話を自分なりにまとめた、付箋と文字に覆われたホワイトボードを置いて、

 壁に張り巡らせた、赤い糸の相関図の前に立つ。


 最後に、考察を書いたメモ帳を構え、さあ来いと言わんばかりに、フンスと鼻から息を吐いた。


「おい新人!しっかりしろ——

 って、え?課長、なんですか?カチョー!」


 教育係を外に締め出し、

 「すまない、続けてくれ」と彼の元へ走った。


「はい、昨日の少女とまた会いまして。

 実はその少女……話を聞いていたら、元宇宙飛行士でもあるそうでして……」

「昨日の設定何処に行ったし!」

「スペースポリスに追われていて」

「すぺえすぽりしゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅう!

 そこじゃない!そこ以外がなぜ矛盾しているのだ!」

「鋭いですね。僕もそう思って聞いたのです。

 でも、最後まで聞いてください、全ての点が一本の線になるので」

「え?そんなトンデモ設定なのに?」

「はい、実は……」

「実は?」

「実は——」


 と、そこで、昼のチャイムが鳴り、

 彼は「すみません、こんなの言い訳ですよね。お客さんの所に行ってきます!」だなんて、出て行ってしまった。


「実はなんなんだよー!」


〇 〇 〇


「ごめんさあぁぁぁぁい!!!」

「もういい加減に——」


 どけ座で滑り込んできたのは——


「……課長?」


 目の下に、それはそれはパンダの様なクマを作った俺だった。


「違う!これはあの壮大な物語の考察の為にだな!」

「仕事。してください……」

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