第9話 解散する以外ない
抵抗を見せたのは伊馬且延。
「なにが無理なんだ、且延?」
且延は冷めた目で飯倉を見た。
「俺たち、互いの信頼なんてないっすよ、はじめから」
茜詩郎が口を開く。
「事務所の都合で集められたメンバー。不満がでるに決まってる。それに、いまの『J×MAP』はアイドルって仕事を勘違してる人間が完全に支配してる」
「アイドルを勘違してる?」
詩郎は瞳に宿る乏しい光彩を力なく向ける。
「ずっと我慢してきた。我慢できたのは、飯倉さん、あなたへの恩義があったからだ。僕らをここまで育ててくれたのは飯倉さん、あなただ。その恩義を僕らはぶち壊したくはなかった」
詩郎の言葉を受け継いで、慎之介も吐露する。
「俺だってあなたの教えを必死に守ろうとしたさ。でも、もう我慢の限界だ! 彼らとは一緒にはやっていけない!」
敢えて飯倉は訊ねる。
「さっきから誰のことを言ってる?」
詩郎が呆れてみせる。
「なにをいまさら」
疑い深く刮目された詩郎の瞳孔から、弱弱しい光が発せられ、息苦しい車内を徘徊する。
「彼らがいる限り『J×MAP』は続けられない。慎之介の今日の行動はそれがとうとう爆発してしまった必然の結果なんだ。でも、もしかしたらそれは明日の僕だったかもしれない」
「ならば、どうしたらいいと思う?」
解決策を探る飯倉に、詩郎はきっぱりと言った。
「『J×MAP』は解散する以外ないです」




