第5話 道化に徹しきってみたらどう?
日に日にアイドルの出番は減っていき、あれほど盛況を極めた歌番組も主放送局やゴールデンタイムから消えていった。代わりに台頭してきたのがバラエティである。その中心にはユーモアと知性と番組回しの才に富んだお笑い芸人が起用された。彼らのトークは至芸だった。彼らにかかれば売れないタレントですら瞬間光が当たった。しかし、そこにアイドルの出る幕はなかった。アイドルはMCが求める裏回し、すなわちMCをサポートする転がしができない。ただひな壇に座って振られたことに優等生的な回答しかできない。そのやりとりは番組制作者からも、その向こうにいる視聴者からも無駄な時間だと思われた。有能なMCだからこそ陳腐なアイドルのコメントを拾い上げ笑いを取れるが、それに依存せねばならない飾り物の芸の低さに、人々は見切りをつけていたのだ。
そんな最中デビューした生粋のアイドル『J×MAP』が売れるはずもなく、俄か仕込みの歌や踊りはすぐに行き詰まった。テレビの出演もだんだんとなくなり、地方営業や演芸場での前座など、端っこの仕事しか回してもらえなくなった。
この危機に、彼らのマネージャー、飯倉三津郎は『J×MAP』の面々に向かってこんなことを言った。
「こうなったらダメもとでさ、道化に徹しきってみたらどう?」
アイドルとしてのプライドを捨てるようアドバイスしたのである。当時のカウボーイ事務所に道化に徹しきれるアイドルはいなかった。そんなことをすればルッキズムで売っている社是に反する。なにより彼らを応援してくれている貴重なファンから叱られる。しかし、飯倉は思った。
(この世界、売れたもん勝ちだ。評価は後からついてくる)




