第3話 ぎすぎすした関係
ある日のお昼の生番組。『J×MAP』のリーダー夢藤雅樹がゲストで呼ばれていた。隣のスタジオでは茜詩郎がドラマ撮りを行っていた。雅樹の生番組が終わった後、二人はたまたま廊下で出くわした。先に声をかけたのは雅樹だった。
「よ、詩郎ちゃん!」
「うん」
詩郎の表情は冴えない。
「ああ、あれか、疑惑のエキスポ・・・」
詩郎が主演を務めるドラマ、正しくは「隠された揣摩」。第1回放送のタイトルが「疑惑に塗れたリングの内側」。開催はもう無理と囁かれ、着工から開催ギリギリで間に合った万国博覧会をテーマに取り上げた13回物シリーズ。その水面下で莫大な裏金が閉幕後問題となっていた。辞退を申し出る誘致国に、収支報告に載っていない得体の知れぬカネがパビリオンの建設費だけでなく誘致国の財政支援に投下されていたのだ。その裏金ルートを探る捜査官の役を『J×MAP』きっての演技派茜詩郎が演じていた。近年低迷する視聴率の中で、このドラマは前半クールだけでも15%を超えていた。かなりの人気ドラマと言って良い。
「演じさせれば、詩郎ちゃんの右に出る奴いないね」
雅樹は詩郎を持ち上げた。
「んなわけないじゃん。本業に失礼だよ」
詩郎は謙虚にお世辞を取り下げた。
「いやいやいや、そんなことない、詩郎ちゃんはもうぜんぜん本業顔負けだって」
ちょっと皮肉ってやろうと思った。
「それって、僕がアイドル失格って言いたいわけ?」
雅樹は笑顔を崩さない。
「ダンスに関しては、そうかもね」
こんなメンバーと立ち話してるくらいなら、ドラマの共演者と話してる方がずっとためになる。だから詩郎は言った。
「御免、夢藤くん、君と話してる暇ないんだ、悪いけど・・・」
こんなぎすぎすした関係の仲間とはできるだけ関わりたくない。そう思ってるのは自分だけだろうか?
詩郎が背を向けた瞬間、雅樹の表情からも笑顔が消えていた。




