第26話 共謀が働きやすい者たち
カウボーイ事務所を後にして小坂部と和田は自由民新党本部を訪ねている。そこで党内最大派閥安西派の会計責任者との面会を請うた。しかし、党本部では各派閥の事務に関して直接回答できないと断られたので、やむなく二人はアポなしで安西派の事務所を訪ねることにした。
移動の車中、小雨が降ってきたので和田はワイパーのINTを最小に回した。フロントガラスの雨滴を硬いワイパーがキキッと不快な音を立てて埃ごと撫でた。一瞬視界は引き延ばされた雨滴と埃の混じった泥水で遮られた。
「やはりどちらも簡単には口を割りませんね」
どちらもというのは党本部、そしてカウボーイのことだ。和田の呟きを小坂部は補聴器を入れた左耳で拾い、国会議事堂に不気味に被さる灰色の雲を睨め上げ、湿った息でフロントガラスの裏側を曇らせた。
「想定内だよ」
「ああは言っていますが、特捜部の調べでは、これまでもカウボーイは不明瞭な金銭授受を繰り返していてアイドルへの宣伝に収支報告書に書けないような巨額の金を費やしているのは間違いないと」
身に覚えがないと言った時の喜多村メイコの毒々しい口紅の色を和田は思い出していた。
「国民の人気を取りたいという点は酷似してるからな、芸能界も政界も。そりゃあ隠そうとするだろ、互いに。一旦利害が合致すればどの団体より共謀が働きやすい両者だ」
かねてより疑いが持たれていた二つの寄り合いに小坂部はいよいよメスを入れる時が来たと思っていた。和田は懸念を口にする。
「しかし、安西派は認めますかね?」
「認めんだろ」
「こっちは証拠、ありますけどね」
水無月はたち
1964年大阪下町生まれ。同志社大学経済学部卒。現在、大阪の某大学勤務。
優しい奥様と独立独歩した我が子たちだけが自慢。
-筆歴-
2023年4月 『戦力外からのリアル三刀流』(つむぎ書房)発刊
2024年3月 『空飛ぶクルマのその先へ 〜沈む自動車業界盟主と捨てられた町工場の対決〜』(つむぎ書房)発刊
2024年7月 『ガチの親子ゲンカやさかい』(つむぎ書房)発刊
2025年7月 『いまじゃ 殺れ 信長を』(つむぎ書房)発刊
2026年3月16日 『神より選ばれし偶像たち』(つむぎ書房)発刊
※当作品は100%作者の手で作り上げた不完全なヒューマンドラマです。AIの力は全く借りておりません。つづきはこちら↓




