第25話 身に覚えのないこと
仲道は眉を少し動かした。
「だから?」
小坂部は表情を固めて言った。
「カウボーイ事務所の筆頭アイドルである夢藤雅樹氏と飛柳拓海氏の宣伝費用としてそのお金が使われた。そこに行き着いてなんの不思議もないということです」
仲道はまったく表情を変えない。
「NKHが買ったパーティー券ですよね、カウボーイ事務所が関わったという証拠は?」
小坂部はやや顔を顰めた。
「この直後、夢藤雅樹氏は紅白の司会を、飛柳拓海氏は大河ドラマの主役を手にしている。このタイミング怪しくないですか?」
「さっきから伺っていると、そうではないかといった当て推量で根拠のない話ばかりです。それでどうしてカウボーイ事務所から政治家にお金が渡ったと言えるのです? 会計報告にそんな記載ありましたか?」
「記載はありません。しかし、副社長がわざわざNKHに出向いて夢藤雅樹氏と飛柳拓海氏の出演料を現金で受け取りに行っていますよね、振り込みでなく。どうしてですか?」
そこはメイコが説明する。
「ちょうどその時、うちの取引先銀行がシステムトラブルで振り込みができなくなっていたのです」
「ああ、ありましたね、そんなこと」
「それで放送局から振り込めないとの問合せをいただいたので、やむなく私が直接受け取りに参上したのです」
「なるほど。しかし、それにしてもNKHにだけ880万円が計上されているのはまだ辻褄が合わない。ひょっとしてカウボーイ事務所が直接的な受け取りを隠すため現金で一部だけ受理し、残りはNKHに広告宣伝費と交際費という名目で処理をさせ、自由民新党のパーティー券購入に充てさせた、こういうことなのではないですか?」
「ですからその証拠を見せてください」
小坂部と和田は暫し黙った。
「どうしたのです? ないのですか?」
小坂部が呟く。
「それを伺いに来たのです」
メイコが冷たく言い放った。
「だったら、もう用件はお済みですね。まったく身に覚えのないことですわ」
水無月はたち
1964年大阪下町生まれ。同志社大学経済学部卒。現在、大阪の某大学勤務。
優しい奥様と独立独歩した我が子たちだけが自慢。
-筆歴-
2023年4月 『戦力外からのリアル三刀流』(つむぎ書房)発刊
2024年3月 『空飛ぶクルマのその先へ 〜沈む自動車業界盟主と捨てられた町工場の対決〜』(つむぎ書房)発刊
2024年7月 『ガチの親子ゲンカやさかい』(つむぎ書房)発刊
2025年7月 『いまじゃ 殺れ 信長を』(つむぎ書房)発刊
2026年3月16日 『神より選ばれし偶像たち』(つむぎ書房)発刊
※当作品は100%作者の手で作り上げた不完全なヒューマンドラマです。AIの力は全く借りておりません。つづきはこちら↓




