第23話 何を仰ってるのかわかりません
「正確には飛ばしでしょう」
「飛ばしなら、含み損が出るだろう。カウボーイは儲かりすぎだ。放送局とのズブズブの関係はいまに始まったことじゃない。しかし、時代が時代ならアイドルの売り方も変わったもんだ。昔は女性アイドルが売れたいがために健気に政治家や名士に自らの体を売ったものだが、いまのアイドルは事務所任せでそんな悲壮感がない」
小坂部は遣る瀬なさそうに溜息をついた。
「しかし、夢を売るどころか夢を壊して自殺者を生み出しているこの惨劇を、カウボーイはどう考えるのだろうな」
和田は皮肉めいた表情で呟く。
「看板タレントを大河の主役に送り込むか、新たなアイドルグループを売り出すことしか考えていないでしょう、あの事務所は」
小坂部は犠牲となったあの女性たちの骸を思い出し、気鬱なまま重い腰を上げた。
「さ、メディアに横取りされる前に、生け捕りに行くか」
だが、事はそう思ったようには簡単ではなかった。
「出演料の横流し?」
喜多村メイコは驚いた表情を見せた。
「NKHから支払われた1000万円の内、出演料120万円を除いた880万円が政治資金パーティー券購入に回されていますよね?」
小坂部は副社長である喜多村メイコに訊ねた。メイコの隣にはカウボーイ事務所の顧問弁護士、仲道節雄が険しい顔して座っている。
「パーティー券?」
メイコは口を開けたまま小坂部と和田の顔を見つめた。
「何のことを仰ってるのかまったくわかりませんけど」
小坂部がカウボーイ事務所の出入金を記載した調査書を出すよう和田に指示した。和田がその書類をメイコと仲道の前に置く。
「そこにありますでしょう。6月7日収録のN202番組に関するタレントへの支払い額」
メイコと仲道が顔を寄せ合って書類に目を落とす。メイコが問う。
「これがなにか?」
水無月はたち
1964年大阪下町生まれ。同志社大学経済学部卒。現在、大阪の某大学勤務。
優しい奥様と独立独歩した我が子たちだけが自慢。
-筆歴-
2023年4月 『戦力外からのリアル三刀流』(つむぎ書房)発刊
2024年3月 『空飛ぶクルマのその先へ 〜沈む自動車業界盟主と捨てられた町工場の対決〜』(つむぎ書房)発刊
2024年7月 『ガチの親子ゲンカやさかい』(つむぎ書房)発刊
2025年7月 『いまじゃ 殺れ 信長を』(つむぎ書房)発刊
2026年3月16日 『神より選ばれし偶像たち』(つむぎ書房)発刊
※当作品は100%作者の手で作り上げた不完全なヒューマンドラマです。AIの力は全く借りておりません。つづきはこちら↓




