第16話 アイドルって何なんでしょうね?
別の日、新潟で雪に埋まった車の中から3人の遺体が見つかった。3人は皆、東京に住む若い女性で、10代が2人、20代が1人であった。死因は一酸化炭素中毒だった。警察が調べたところによると、3人にはそれまで面識はなさそうで車を所有していた20代の麻倉真悠がインターネットで自殺志願者を募ったらしく、これに女子大生の戸倉彩芽と女子高校生の永谷花凛が応じて、東京都立川市で落ち合った。そこから麻倉真悠の運転する軽自動車で新潟に向かい、雪深い山村で車を止めエンジンをかけたまま車を雪に埋めた。3人は睡眠薬を飲んだあと、車内の一酸化炭素が高濃度なるよう練炭に火を点け周到に自殺を図った。発見された時、軽自動車の中で若い彼女らは顔を歪め苦しそうに口を喘いだまま死んでいた。3人はそれぞれアイドルタレントの名前が刺繍されたローブを羽織っており、麻倉真悠がピンクのローブを、戸倉彩芽が黄色のローブを、永谷花凛が緑のローブを纏っていた。その色は茜詩郎=ピンク、葉室剛士=黄色、赤澤慎之介=緑のイメージカラーだった。彼女らの手にはそれぞれの推しのキャラグッズが握られており、苦しみながらもそれだけは手放さなかった。
雪が舞う中、検死を担当した検事の小坂部和樹は共に立ち会っていた副検事の和田彰良に呟いた。
「これで4例目だな」
ブルーシートで覆われた狭い囲いの中、和田彰良は遺体収容袋に収められ並べられた3人の女性の遺体を物悲しく眺めて言った。
「アイドルって何なんでしょうね?」




