第13話 解散
詩郎が口を挟む。
「実は、僕たち事務所を作ろうと思ってて・・・」
隣で慎之介と剛士が頷いている。喜多村の表情が急に険しくなる。
「できると思ってるのか?」
地雷に触れてしまった。カウボーイ事務所には退所したタレントに対し厳格極まる制裁がある。退所したタレントの芸能活動を徹底して邪魔をする。事務所の威光を翳し、各テレビ局に手を回し裏切り者の起用を完全阻止する。起用しようものならカウボーイ所属のアイドルタレントをその局に一切回さない。それは業界の常識だった。
その制裁を慎之介も詩郎も剛士も知らないわけではない。だが、彼らはその制裁すら恐れぬほどここに愛想をつかしていた。
何のことか、ここで伊馬且延がさらに地雷を誘発する。
「関係ないっす」
違う空気が流れ、メンバーが一斉に且延を見る。
「どっちみち辞めるんで、俺、芸能界」
喜多村が眉を歪め、瞼を絞る。
「辞める?」
「はい。ずっと考えてました」
「なにをするつもりだ?」
「民間機のパイロットになりたいんです。世界中を飛び回って」
「愚かな・・・」
「でも、もう決めたんで」
メンバー全員を睥睨して喜多村は最後にこう言い放った。
「出ていきたいやつは勝手に出てけ! だがな、俺の目が黒いうちはこの世界で飯はぜったい食わさん! 絶対にな!」
国民的アイドルグループの解散が、名実ともに確定した日だった。




