第10話 枠の中ではもう収まらぬ
「解散?」
飯倉の話を聞いたメイコは口を歪めた。メイコは社長の妹である。
「冗談いわないで」
「私も冗談だと思いたいんです」
「どうしてそんなことになったの!」
「申し訳ありません。しかし、アイドルというものは売れると決まって増上慢になる生き物で・・・」
飯倉の胸の内には彼がこれまで手掛けた『TANOSIN』と『輝GENKI』の存在があった。飯倉は脂でテカった鼻先を人差し指で緩く掻いた。
「詩郎は言いました。アイドルを勘違してる人間がいるって」
「誰のこと?」
「副社長的に言えば、飛び抜けた才能のあの二人ですよ」
メイコは真っ赤なくちびるから不満の毒々しい息を発した。
「何を言ってるの! 彼らがいるから売れたのよ」
事務所はそうやって彼らを特別扱いしてきた。
「つまり、嫉妬してるわけね、慎之介たちは」
「いや、単純にそうとばかりは言えないでしょうね」
「じゃあ、他なに?」
「見えなくなってきてるのでしょう、アイドルというものが」
「でも、あなたそれを見越して言ってくれてたわよね」
アイドルはいかなる時も広い視野と大らかな心で笑顔でいろ。飯倉は彼らに常々そう諭してきた。
「言いました」
「それを忘れたの?」
「その枠の中ではもう収まらぬほどに大きくなったということでしょう。国民的アイドルってそういうものなんだと思います」
「自惚れだわ」
「そうですね、自惚れです。ですが、彼らは『J×MAP』から出なければ、それが見えない」
「解散は認めないわ」
「縛っても、出ていくでしょう」
「出ていくなら思い知らせてやるわ、うちの力を」




