石の劣化とカルメザイト
「兵士の命と引き換えに放たれた魔術じゃ。恨みも籠もっていよう。彼らの怨念は、一番固いと言われていた、カルメザイトという石に封印した。石が劣化したら封印が解ける懸念はあったが、当時はそこまで気にする余裕がなかったのじゃ。すぐに、この世界で戦争が始まってしまったからの」
「三大陸戦争ですか。国外の人と会ったことがないので、今でも他に国があるなんて、信じられないのですが――」
「戦争は悪化し、カルメザイトも手に入らなくなってしまったのじゃ」
「その石でないと封印は出来ないのですか?」
私の質問に賢者セルスは、きっぱりと答えた。
「そうじゃ。その石が一番封印に合っている。他の石では難しいじゃろう。他の石でも構わないが、持って一年といったところか」
「一年……」
「現状と変わらないということですね」
「消滅させることはできないのですか?」
私の質問にセルスは困った顔をしながら答えた。
「一体なら可能であろう。しかしあれは悪魔――悪魔の怨霊が数百詰まったものじゃ。聖女の浄化魔術でも無理じゃろう」
「では、どうすればいいんだ?」
殿下の質問に、セルスの動きが一瞬止まった。こういう間は、AIチャットを思い出す。
「簡単じゃ。封印を諦めるか、他国へ行ってカルメザイトを手に入れるか――」
「今は国交が途絶えているんだ。戦争が終結してから、どこの国の人とも会っていない。国王とも――魚雷もあるし」
「はて。他国は魔術が使えなかったかの。他国へは転移魔術陣を使えば、行くことが可能じゃ」
「ええ? セルス様、それは本当ですか?」
セルスの回答にオリバ先生は目を丸くし、キラキラとした瞳で聞いていた。
「本当も何も、海には魚雷が残っているのなら、それしか方法はないじゃろう」
「では、どうすれば――」
オリバ先生が、賢者セルスに聞こうとした瞬間、セルスは言葉を遮った。
「ほれ、時間じゃの」
「え、待って――」
酸素が薄くなったためか、私達は前回と同じように森へ飛ばされていた。忘れ草の存在を思い出した私達は青くなった。
「逃げるぞ」
殿下の言葉に、私達は一斉に駆けだしたのだった。




