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呪いの魔術

「今から1000年前。わしは追っ手から逃げようとして、いつの間にかこの世界へ転移していた」


「前回、聞いた話ですわね」


 私の言葉に頷くと、殿下はセルスへ言った。


「続けてください」


「罪人だったわしは、この世界に逃げ延びたが、こちらの世界へは『追って』が放たれた」


「賢者セルスが誰かに追われるようなことをするはずがありません――どういう事ですか?」


 オリバ先生の疑問はもっともだった。誰も聞けない内容を、さらっと聞けてしまうのが、オリバ先生のすごいところ。賢者セルスは一つ咳払いをすると、先生の疑問に答えた。


「わしが元もといた世界と、この世界では『理』が違う。以前にいた世界では、成人する前に第三次世界大戦に突入してしまった」


「第三次世界大戦? 戦争ですか?」


「そんな生易しいものではない。一方的な殺戮じゃ。戦争に負けた人族は魔族の支配を受けていた。獣人族やエルフ族、ドアーフや悪魔族も魔族の傘下に入っていた。ところが、魔族の支配下にある悪魔族が反旗を翻し、王座を奪還したのじゃ。彼らは玉座を手に入れると、自分たち以外の種族を皆殺しにしていった。わしは研究者としての仕事を続けるように言われ、地下で仕事を続けていたのじゃが、何のために自分は生きているのだろうと思ってしまっての」


「……」


「同胞が消えていく中、私は監視の目を盗んで、新しい世界を作る研究を続けていたのじゃ」


「新しい世界?」


「異次元に新世界をつくり、人族や獣人族が生き延びれる世界を作ろうと思ったのじゃ。夢みたいな話で、現実に出来るとは思っていなかった──でも、希望があれば人は生きられる。研究結果を出せないまま、私の個人的な研究は、彼らに見つかってしまった。その時わしは、研究室にあった魔石で証拠を隠滅すると、役人が来る前に地下から逃げ出したのじゃ」


「……」


 あまりの内容に、私達五人は言葉を失った。何も言葉が見つからないまま、私はセルスの次の言葉を待った。


「逃げ出した先にも、彼らは追いかけてきた。追いかけられないはずなのだが、私の気配を察知して、この世界に刺客だけ放ったのだ。影のような攻撃が続いて、私は死に物狂いで闘って、全てを打ち倒した。けれど、一つだけ見逃していた。禁忌の魔術で、ある人を執拗に追い回す魔術――魂を使った呪術なんじゃが、思い出すだけでも恐ろしい」


「魂を使った魔術ですか?」


「さよう、呪いの魔術で『怨霊』とか『怨念』などと言われることのある、悪魔爆弾みたいなものじゃ」


「……」




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