闘い
辺りの霧が急に晴れて、目の前に遺跡が現れた時になって初めて、私は自分が屋敷を出て来てしまったことに、慌てたが、目の前には倒れているユン兄がいた。青白い顔をしているが、まだ生きている。今からでも、まだ間に合うだろう。
「レディトリア!」
「──レイラ?」
「ユン兄、よかった」
治癒術を使うと、ユン兄は目を覚ました。それと同時に、ここが何処だか思い出したのか、青い顔をしながら首を横に振っていた。
「だめだ、逃げないと……」
「何があったの?」
「幽霊だよ」
「幽霊?」
ユン兄の話によると、ユン兄が遺跡へ通じる道の封鎖を確認しに来た時に、小さな女の子が遺跡の中へ入って行くのを見かけたらしい。声を掛けようとして追いかけると、女の子の足は思った以上に速くて、追いつく前に見失ってしまったという──それが遺跡の前で、慌てて戻ろうとした時には、何者かに攻撃されていたらしい。
「ユン兄、それは本当に幽霊でしょうか? 私には――」
「危ない!」
背後から来た攻撃に、私は咄嗟に土魔術を使った。
「ウォールプロテクション!」
土が半球状に盛り上がると、私達は攻撃をギリギリのところで躱した。
「レイラ、遺跡……」
ユン兄が何かをしきりに訴えているので、遺跡の方を見ると、そこには行方不明になったはずの、ボブとマイクが倒れていた。その間に、攻撃は何度も続いている。攻撃がボブとマイクに及ぶ前に決着をつけなければならないだろう。
(なんで私が、見えざるものの手の攻撃を受けなければならないのよ)
私は側に倒れているユン兄を見て、あり得ない可能性を悟った──ユン兄はいつもお父様やお母様に似ていないなと思っていた。ただ、そんなことは珍しくなかった。親に似ていない子供も結構いるから、そんなはずはないと思い込んでいたのだ。
(よくみれば、成長したラインハルト殿下似ているのよね、ユン兄は……)
けれど今は、そんなことを気にしている場合では無い──私は頭を振ると、目の前の攻撃に意識を集中させた。
「ウォールプロテクション!」




