遺跡
「いや、仕方ないよ。レイラが帰って来るっていう話を聞いた時は、村は平和そのものだったから」
「手がかりなどは、見つかりませんでしたの?」
「ないよ――何も無い。だから、村の自警団も困り果てているんだ。遺跡は立ち入り禁止にしている」
「だから、遺跡へ続く道にロープが張られていたのですね」
「危険だからね」
私は屋敷へ着く前に、遺跡へ続く道の前を馬車で通ったが、ロープが張られていて少しおかしいと思っていたのだ。危険だから立ち入り禁止にしていたのだと、今になって納得していた。
「お父様──でしたら、立ち入り禁止の看板も立てた方がよろしいですわ。あとロープにも布を垂れ下がるように取り付けて、立ち入り禁止と書いた方がよろしいかと」
「おお、さすがレイラ。そうだな、そうしよう。悪いが、先に昼食を食べていてくれ」
「お気をつけて、お父様」
「ありがとう、行ってくる」
「レイラ、学園生活はどうですか?」
私はミーアが退学してフィリップと恋仲になったことや、リトッシュが遺跡で記憶喪失になったことを思い出していた。
「えっと、楽しかったですわ。それなりに」
「殿下とは、上手くやっていますか?」
急に殿下の話が出てきたので、私はしどろもどろになってしまった。殿下は好きだけど、このままでは結婚は出来ないと思っていた。でもそれは、殿下も同じだろう。見えざるものの手を止めようとして、最近は意気投合し始めたが。
「はい。この間は、一緒に買い物に出かけて、置物を買ってもらいましたわ」
「置物……」
私はキラキラと雪が舞うスノードームの置物を思い出して、うっとりした。
「殿下は、素晴らしい方ですわ」
「そうね。ごめんなさい、レイラ。私、少し眩暈がしてきたわ――」
「大丈夫ですか? お母様」
お母様は虚弱体質だ。少しでも体調を崩すと熱を出してしまう。私は執事のミカエルを呼ぶと、お母様を部屋で休ませるように言ったのだった。




