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心の病

 もし彼が、心の病だったとして、この世界では、彼が病気だということを証明する手立てが無い──私は前世の記憶をたぐり寄せながら、自分に話せることを話した。


「フィリップ様、私が今から話す内容を聞いて――気を悪くしないでくださいませ」


「何を?」


「おそれながらフィリップ様は、心の病を抱えているのではないかと思われます」


「心の病?」


「心理的にも身体的にも過度に負担を強いられると、心が壊れてしまう場合がございます。私が知る限り、完璧な人間などおりません。少しお休みになられるのが、よいでしょう」


「私が病気? まさか」


「病気にかかった方は、大抵はそのように仰います。ですから――」


「構わないでくれ。私は病気になど、なっていない」


「では、なぜ留年など……」


「放っておいてくれ――頼む」


「分かりました。もし何かあれば、仰ってください。いつでも力になりますから……」


 殿下の護衛であるフィリップが、このような状態では、何かあった時に問題だろう。私は目の前にいる人を、助けることも出来ないのかと自分で自分の無力を嘆いた。


「ありがとうございます。ですが――」


 これ以上どうすればよいのかと、私は目の前にいるフィリップに手の平を向けると、無詠唱で聖魔術を放った。先日出来るようになったばかりだが、効果は詠唱の時と、さほど変わらない。荒治療だったが、これで駄目ならフィリップには、殿下の護衛から降りてもらった方がいいだろう――護衛の仕事は、決して楽ではないだろうから。


「なにが起きて――あれ?」


 フィリップは自分の手のひらを見つめると、不思議な顔をしていた。


「どうなさいまして?」


「レイラ様?」


「ご気分は?」


「すごくいい。私は、今まで何をしていたんだろう? 今なら、何でも出来る気がするよ」


「よかったです」


「レイラ様。私は、あなたを尊敬します」


「ありがとうございます。それでは、ごきげんよう」


 私は踵を返すと、掲示板から早歩きで去った。彼の私を見る目が、少しおかしかった。まるで何かの熱に浮かされているような――そこまで考えて、私は首を横に振った。


(もしかして、何かフラグを立ててしまった?)


 私は教室へ入ると、もやもやした気持ちを抱えながらアイラに挨拶をした。そして、気分が晴れないまま、アイラと一緒に出かける日を決めたのだった。




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