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留年

 試験が終わって、春休みになる前――掲示板には、進級できなかった生徒の名前が貼り出されていた。


 普通クラスの生徒で留年する生徒が出るのは、いつものことだったが、特進クラスの生徒で過去に進級出来なかった者はいない。 


 特進クラスの生徒は基本的に貴族であるため、家庭教師がついているのだ。進級は出席さえすれば、可能なようなものだった。けれど、今年は進級出来なかった生徒が一人いた。


 ────フィリップ・カルロス


 私は名前を見た瞬間、息を呑んだ。フィリップは実技試験こそ完璧にこなしたものの、ペーパーテストについては欠席しており、追試や補習の授業も、殿下の護衛があるからと言って欠席していた。留年になってしまうのは当然だろう。


「何だか、フィリプ様らしくないわね」


「私らしいって何だろう?」


 掲示板を見ていた私の背後にいたのは、フィリップだった。私にはフィリップが、ミーアと同学年になりたくて留年したとしか思えなかった。


「ご自分でお分かりにならないのでしたら、申し訳ありませんが、私にも分かりませんわ。以前のフィリップ様は、剣技にひたむきで、誰にでも優しくて、寡黙で強い男性というイメージでしたの。でも今は――」


「女の後をつけ回す変態とか?」


「やっぱり街でミーアと一緒にいたのは、フィリップ様でしたのね」


「偶然出会っただけなんだ。私が留年したのと、ミーアは関係ない」


「でも、周りの人たちはそうは思いませんわ」


「分かってる。父上にも言われたよ。今のフィリップには、騎士団長の地位は譲れないと。今の時代、身分とか関係ないから、次の団長は騎士団の中から選ぶと言われたよ」


「でしたら――」


「あの遺跡に行ってから、何故か自分を見失うようになってしまったんだ。ミーアと話している時だけは、自分が自分でいられるっていうか――みんな、私のことを過大評価しすぎなんだよ。剣技だって、たいした技は使えないし、先生にはいつも力業だって言われるし」


「自分が自分じゃ無い感じがするとか?」


「……そうかもしれない。自分でも、よく分からないんだ」




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