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進級試験

 学園に戻ると、掲示板に進級試験の案内が貼られていた。形式的なものではあるが、二年になる前に簡単なテストが行われる。このテストで進級できない人はいないと思うが、たまに出席日数が足りなくて進級できない人もいた。


「再来週から順番に実技テストが行われた後、ペーパーテストがあるのね。普通、逆だと思うんだけど」


「何が逆なのですか?」


 側にいたベイルが私の呟きに気がついたのか、質問をされてしまった。


「いえ、なんでもないのよ。気にしないで」


 前世の学校と比べて順番が逆だなんて言えない。そう言えば、前世の記憶を思い出してから、この世界で自分が生まれ変わりだと言うことを、まだ誰にも話していなかった。


「フィリップ様、今日も来てないのね」


「体調が、お悪いとか」


「でも、もうすぐ試験でしょう? 心配ね」


「――はい」


 私は変わってしまったフィリップよりもアイラのことが心配だった。今まで以上に勉強にのめり込むアイラを見ていると、何だか心が痛かった──それでも何かを吹っ切るように勉強に励む彼女は、生き生きとしていて輝いていた。


「ベイン見て。模擬試験を受けたら満点だったのよ」


 アイラの護衛であるミーアがいなくなって、公爵家からは侍従であるベインが学園へ来ていた。彼は魔術が使えなかったが、腕は立つらしく、護衛と言うことで特別にアイラの傍で仕えていた。


 街で販売されている模擬試験の教材は、学園の卒業生が作っているという。今となっては、試験対策にはに欠かせないその教本は『セラ本』と呼ばれていた。


「アイラ様、勉学に励むのは素晴らしいことですわ。ですが、あまり無理はされないよう――」


 今朝、久々にアイラを正面から見た。そしたら、アイラの目の下には、はっきりと分かるほどのクマが出来ていたのだ。


 本人は気にしていないのだろうが、美貌に気を使えないほど、勉学にのめり込むのは貴族としてはあまりよろしくない。


「レイラ様。ご心配おかけして、申し訳ございません。ですが、私はお父様と話し合って、公爵家事業の一部を受け継ぐことが正式に決まりましたの。いわば、これは自分自身のためですわ。決して自暴自棄になった訳ではございませんの」


「そ、そう? それならいいのですが……」


 試験まで日数はないが、その前に倒れてしまわないか心配になってきた私は、事前に用意していたポプリを手渡した。


「なに、これ?」


「マサラのポプリですわ」


「マサラ?」


「色々な花々を集めてポプリにしましたの」


「それがマサラ?」




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