雑貨屋
「だって途中から、私の話を聞いていなかったでしょう? ダンスは踊れても、相手の話に耳を傾けられなければ駄目だよ」
「ラインハルト様のいじわる――あんな事を言われたら無理です」
「ごめんね。でも、可愛かったから。婚約者に好きだって、ちゃんと伝えることは大切だろう?」
「そうですね、大切です」
からかわれているのが分かって、私は涙目になりながら殿下を睨んだ。
「レイラ、怒らないで。明日はレイラの誕生日でしょ? 好きなものを買ってあげるから、馬車に乗って」
「え?」
「やっぱり何も聞いてなかったんだね。これから街へ行って、一緒にレイラの欲しいものを買おう」
「お出かけですか?」
「私と一緒に出かけるのは嫌?」
「ううん。嬉しいです」
思わず本音を言ってしまった私は、しまったと思って口を押さえた。
「レイラが正直に自分の気持ちを話してくれて、私も嬉しい」
私は恥ずかくて穴に入りたい気分になりつつも、再び殿下の手を取ると、一緒に街へ繰り出したのだった。
※※※※※
城から馬車を出してもらい、街に着いた後は色々な店を見て回った。オーダーメイドのブランドショップや宝石店の前でラインハルト殿下に何か欲しいものはないかと聞かれたが、私は洋服や宝石に興味はなかった。どうせなら、魔術書が欲しい――そう思っていると、馬車は大通りから一本先の裏路地に入った道を走りはじめ、小さなお店の前で停まった。
街角にある一軒家の小さなお店の壁には、蔦が這っており、風化したレンガの割れ目からは花が咲いていた。
「殿下、ここは?」
「雑貨屋らしいんだけど……」
「雑貨屋?」
「とりあえず、入ってみない?」
「え、ええ……」
ドアの前まで行くと、ドアには『開いてます』と書かれた看板が掛かっていた。
「失礼しまーす」
私が恐る恐るドアを開けると、ドアベルが鳴り、奥から女性が出てきた。
「いらっしゃい」
そう言ったのは、店の奥から出て来たふくよかな女性ではなく、足元にいた小さな女の子だった。
「こんにちは」
「こんにちは!」
女の子は元気よく挨拶すると、走って外へ出て行った。
「いらっしゃい。どうぞ、ごゆっくり」
「ありがとうございます」
女性は私達のことを知っているのか、こちらを見ると微笑んでいた。お店の中には、可愛らしい雑貨が所狭しと並んでいた。
小さなお人形や、お人形用の小さな鞄、花模様のグラスやスノードーム――え、待って。スノードーム?
「これは……」




