誕生日プレゼント
夏が過ぎ、秋が来て季節は冬になった。冬休みになる前に、私達は両親に手紙を書いた。普通の生徒なら、冬休みに帰省するのだが、今年は帰れそうになかった。殿下の護衛もあるが、私は城へ行って、こなせていない王妃教育を受けなければならない。
生まれ変わりなどではなく、本当の13才なら、逃げ出していてもおかしくない。いや、来週誕生日を迎えるから14才か。
「レイラは、何か欲しいものはない?」
学園から城へ帰る途中の馬車で、私は殿下から質問されていた。私と殿下の他に、ベイルとフィリップも乗っている。殿下は私の誕生日を祝ってくれるつもりらしく、熱心に私の好きな食べ物を聞いていた。
最近のフィリップは、ミーアに執着することがなくなったが、心ここにあらずといった様子だった。夏前にアイラが怒っていたのが、かなり昔のことのように感じられる。
「特には――温かいものが、食べたいですわ」
「では、シェフに特製のスープを作ってもらおう。レイラはトマトスープが好きだったよね?」
「はい。特にカルケッソが好きですわ」
「分かった。あれの特別版をシェフにお願いしよう」
カルケッソとは、母親がたまに作ってくれたトマト煮込み料理で――いわゆる田舎料理だ。カルケッソが食べたいなんて言って、大丈夫かしら?
「レイラ、心配しなくても大丈夫だよ。他に欲しいものはないの?」
ベイルが咳払いしている。何か答えないと不味いかしら。
「では、本が欲しいですわ。何か面白い本をいただけると嬉しいですわ」
「面白い本――考えてみるよ」
「ありがとうございます」
楽しみが出来た分、私は期待に胸を膨らませながら馬車の外を眺めていた。窓の外を眺めていると、殿下が私のつむじにキスをするのを感じた。
「殿下、私達がいます」
「堅いこと言うな」
フィリップの冷静なつっこみに、ミーアとの仲はどうなったのだろうと思った。あれからアイラと仲直り出来なかったミーアは、秋前に学園を中退していた。
アイラの護衛が出来ないのであれば、解雇されても仕方がないだろう。だけど、どういう訳かミーアは公爵家の私兵として別の場所で再雇用されていた。彼女の才能を見込んでの事なのだろうが、聞いた話によれば、奨学金制度を利用して、入学の再試験を受ける予定だという。
「ミーアは今頃どうしているのかしら?」
能面だったフィリップの表情が僅かに動いた気がしたが、彼は顔を背けると窓の外を眺めていた。
「きっと元気にやってるさ。それより、この間レイラが話していた地下施設についてなんだけど――」
「ああ、あれは――」
それ以降は、学園の授業や国の施設についての話になり、ミーアの話は、それきりになってしまった。




