友達からの告白
「騎士団の見学の方が先だっただろう? そこでフィリップ様の父親である騎士団長が実際に剣の演武を披露して見せたんだ。そしたら、ミーアが感激しちゃってさ。フィリップ様はフィリップ様で、ちゃっかり親にミーアの事を紹介してたらしい」
「なんで、そうなるのよ」
「殿下は言うタイミングをすっかり見失ってしまったらしく、冒険者ギルドでも彼らが四六時中一緒にいるのが気になって、話しかけようとしたらしいんだ。そしたら、それどころじゃなくなったって――」
「見えざるものの手ね」
「そういうこと。さっき、フィリップ様にミーアのことを伝えたんだ。先々週までは婚約者がいたってこと──そしたら、『それだけ彼女が魅力的だということだろう? 誰からも好かれる性格なんだよ、彼女は。男女の関係は無かったと聞いているし』って、言ってたね」
「意味が分からないわ」
「僕もそう思う。フィリップ様の女性関係って知らないけど、女性に興味があるとは思えなかったんだよね」
「私も女性に興味があるとは思えないわ。何となく、井戸の遺跡に行ってから、様子がおかしいような気がしているの」
「遺跡?」
「リトッシュも壁画を見たあと、忘れ草に遭遇したんじゃない?」
「ああ、あれ――忘れ草のせいかは分からないんだけど、よく覚えてないんだ。何をしゃべっているのか分からなかったし。気がついたら森にいたんだ」
「その後、様子がおかしかったから心配したのよ」
私がそう言うと、リトッシュは唇を引き結んだ。驚いた猫のような、変な顔をしている。
「あの時の記憶は曖昧で――でも、レイラ様の顔を見たら、覚醒したというか何というか」
「覚醒?」
「……」
「もう、なんなのよ」
「はじめはレイラ様が聖女だから、何か呪われていたけど、浄化されたんだって思ったんだ──だけど違った。忘れ草には二つの花言葉があるのは知ってる?」
「真実の愛? もう一つあるの?」
「うん。もう一つの意味は『叶わない恋』。そのどちらも満たしている僕は、忘れ草にやられなかったんだ」
「え? 花言葉に当てはまると、忘れ草の影響を受けないの? 違うわよね?」
「諸説あるけど、花言葉の二つの意味を満たしている人は、忘れ草にやられても、影響が少ないと言われているんだ」
「初めて聞いたわ──真実の愛と叶わない恋? リトッシュもやるわね」
「君だよ」
「え?」
「君のことが好きなんだ。だから自分を見失わないでいられた」
「そんなことを急に言われても」
「レイラが殿下を好きなのは知ってる。でも僕の気持ちが、君にあるって事も知っておいて欲しかったんだ」
「――そう」
「それだけ」
急な告白に、私はどうしたらいいのか分からずに、鞄を掴むと教室を出た。ベイルがいないと思ったら、教室を出たところで何故か待機していた。おそらく、空気を読んで先に外へ出ていたのだろう。私は鞄をベイルへ預けると、走りだした──そのまま走り続けて、校舎の外へ出たのだった。




