課外授業の中止
「レイラさん? 随分と派手な登場でしたね」
オリバ先生の声に驚いた私は、ぎこちない動きで後ろを振り返った。
「お、オリバ先生――これには訳が」
「自習を抜け出して、冒険者ギルドへ来るなど、一体どんな訳があるのでしょう?」
「申し訳ありません」
「皆さん、課外授業は中止です! 速やかに学園へ戻ってください」
街では歓声が上がっていたが、オリバ先生の拡声器を使ったような大声に、周囲は静まりかえった。私はもともと後で怒られるのを覚悟していたが、実際に叱られると憂鬱な気分になった。
「レイラ、君が無事で良かったよ」
ラインハルト殿下が、私の肩を抱き寄せて安心したように息を吐いた。彼が無事だったのだ。それだけでも神に感謝しよう。
(そう言えば神様って──セルスの話だと、この世界には、いないみたいなのよね)
私はこの世界に生を受けてから、ずっとアウラ神がいると信じていた。そうすることが、当然だと思っていたからだ。信じていたものが、偽りだったなんて考えたくもない。
私は新たに生まれた疑問を頭の隅に追いやると、学園へ戻ったのだった。
※※※※※
次の日の課外授業は中止になった。昨日のことが原因で中止になったのだろうが、おそらく狙われたのは殿下だ――それでも、学園側は安全策をとったのだろう。街に危険が及ばないとは限らない。
放課後になって、私はリトッシュを呼び止めた。それと同時に、アイラとミーアが私に挨拶をすると、お互い素知らぬ顔で私達の脇をすり抜けて教室を出て行った。
「「ごきげんよう」」
「ご、ごきげんよう」
二人の様子が気になりつつも、どうしてもリトッシュには先に聞いておきたいことがあった。
「リトッシュ様、昨日の件についてですが……」
「あーうん、分かってる。分かってるんだ、上手くいかなかったってことは」
「殿下に何をお願いされたのですか?」
「いや、たいしたことじゃないんだよ。実はミーアは婚約破棄されたことがあるとか、農村出身だとか、騙されやすいとか――マイナス面を、それとなく伝えてもらって、幻滅させようとしたんだ」
「最低ですね」
「しかたないだろう? 他にいい方法が思い浮かばなかったんだから」
「それで殿下は、そのことをフィリップ様に伝えたのですか?」
「あーうん。言えなかったって、言ってた」
「それは、そうでしょう」
私は王族に何を言わせようとしているんだと思いつつも、殿下の性格を考えると言えないだろうな、と思った。




