ギルドに併設された食堂
「三人揃って、どちらへ向かわれますの」
教室を出る前にアイラに呼び止められた私は、苦しい言い訳をした。
「こ、校庭で少し魔術の練習を──」
「私も、ご一緒してよろしいかしら?」
「え、ええ……」
「分かってますのよ」
「何のことでしょう?」
「一緒に行けないなら、オリバ先生に──」
「アイラ様、一緒に行きましょう」
人数が多くなり、先生に見つからないか心配になったが、魔術の練習をする振りをしながら、私達は何とか学園の外へ出たのだった。
※※※※※
校庭で魔術の練習をする振りをしながら、普通に正門を出た私達は、殿下達がいると思われる冒険者ギルドへ向かった。A班は騎士団を見学した後、街の冒険者ギルドを見学する予定になっていた。
冒険者ギルドに到着した私達は、何食わぬ顔で冒険者ギルドに併設されている食堂へ向かった。
「おや? リトッシュ。今日は学校じゃないのかい?」
食堂のおばさんに声を掛けられたリトッシュは、これまた何食わぬ顔で、食堂のおばさんへ答えていた。
「今日は課外授業で隣の冒険者ギルドに来てたんだけど、お腹が空いたから抜け出して来ちゃった」
「駄目じゃないか――まあ、お腹が空いてはなんとやらと言うからね。何か食べてくかい?」
「ありがとう。じゃあ、いつものポテトフライを四人分お願い。ついでに今日のことは黙っておいてもらえると助かる」
そう言ったリトッシュは、テーブルの上に銀貨を一枚置いた。おそらく口止め料を含めた金額なのだろう。
「おや──いいのかい? 今日は、ずいぶんと気前がいいね」
「友達もいるからね。四人分の口止め料」
「そうかい。それじゃ、ありがたくいただいておくよ」
「いいの? リトッシュ」
「この間、魔術師団から依頼があって作った魔術具の報酬を、受け取ったばかりだからね。問題ないよ」
「ありがとう。リトッシュ」
私の言葉に、何故かリトッシュは赤くなっていた。
「私からもお礼を言うわ、リトッシュ。それにしても、こっちはこっちで大変そうじゃない」
「そんなことはない。こっちは、何も問題が起きてないじゃないか」
「それもそうね。でも、お利口さんでいることが果たして正解かしら? この先の人生、どうなるかなんて誰にも分からないのよ?」
「僕は平和主義者なんだ。余計な波風は立てないでくれ」
「リトッシュの平和主義に、あの方も救われたわね。私だったら耐えられない。国外へ逃げちゃうかも」
「僕には魔術があるからね――後も継がなきゃならないし。逃げたりなんかしないよ。それより、みんな残さず食べてよ。僕のおごりだから」
「みんな、おまたせ。たくさん食べておくれよ」
「「「……」」」
私達の前に置かれたポテトフライは、大きめのラーメンどんぶりみたいなお皿に、山盛りに盛られたポテトフライだった。その多さに度肝を抜かれながらも、私達は慌ててポテトを頬張った。
「もう出てきちゃうんじゃない? 殿下達」
「こんな量が出てくるなんて聞いてないわよ」
泣きそうになりながら食べているアイラは、口一杯にポテトを頬張っていた。
「これが平民が食べる食事の普通量なんだよ。体力仕事をした後には、これくらいか、それ以上に食べないとやっていけないんだって」
「なにそれ? どこから仕入れた情報? ぜったい違うと思うんだけど」
「時々思うのですが、リトッシュ様は平民のことを馬鹿にしてますよね」
ベイルの言葉に驚いたリトッシュは、口にしたポテトを喉に詰まらせていた。
「馬鹿になんかしてないし!」
リトッシュがそう言った瞬間、冒険者ギルドから悲鳴が上がった。
「きゃあああぁぁぁ」
「みんな、逃げろ!」




