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噂の出どころ

 理事長室へ着くと、理事長の他にコンラッドとアイラがいた。井戸の中での出来事を話すと、理事長は不思議な顔をしていた。


「そうか。君たちには、彼が何を話しているのか、分かったのか」


「え? 普通に話してましたけど」


「井戸の中にある通路を進むと、古代遺跡があるのは学園の関係者なら、誰もが知っているんだ。ただ、何を言っているのか分からない内に、いつも森の中へ強制転移させられてしまうから困っていてね。とりあえず、学園の外側にある森に結界を張り、範囲を広げることで生徒の安全を図ろうとしたんだ。そしたら今度は、森に忘れ草が大量発生してしまってね――だから、生徒達が森に近づかないように、井戸の噂を意図的に流したんだよ」


「なるほど。噂話の出所は理事長でしたの」


 アイラは機嫌が悪いのか、眉根を寄せてイライラしたような話し方をしていた。何をそんなに不機嫌になっているのかと思っていると、不意に殿下がアイラへ言った。


「フィリップは、忘れ草にやられて保健室で眠っている。重傷とかではないから、大丈夫だとは思うが」


 殿下の言葉に赤くなったアイラは、しばらくすると青くなった。きっと、自分の事を忘れてしまっていたら、どうしようとか──そんなことを考えているに違いなかった。


「私、急用を思い出しましたの。これで失礼致しますわ」


 アイラは淑女の礼(カーテシー)をすると踵を返し、走るように部屋を出て行った。


「若いっていいねぇ……」


「理事長。彼女は、なぜ理事長室へ来ていたのですか?」


「ああ、彼女は彼女の護衛――ミーアだったかな? 彼女の欠席を補習をすることで、出席扱いにして欲しいと、私に頼みに来てたんだよ。本来なら難しい所なんだが、事情が事情だけに特例として認めることになったんだ。彼女は公爵家の護衛も兼ねてるからね。私も断るに断れなかったのさ」


「それじゃあ、ミーアは……」


「来週には、復帰出来ると言っていたよ」


 復帰して大丈夫なのだろうか――いろいろと疑問は残るが、理事長が許可した以上、余計なことは何も言えないと思った。


「理事長、井戸の件についてなのですが……」


 殿下は井戸で起こった事や、見えざるものの手について、理事長へ詳しく話していた。


「なるほど。異世界からの攻撃か――だとしたら、今も攻撃されているのは、流石におかしくないか? 賢者セルスがいた頃からの攻撃だろう?」


 理事長の問いに殿下は頷いていた。


「賢者セルスも、そのように言っておりました。私も、何か別のことが原因なのではないかと考えております」


「困ったな。いや、今日は調査へ行ってくれてありがとう。助かったよ。あとで、フィリップの所へ見舞いに行ってみよう──今は取り込み中かもしれないからな」


「ええ、そうですね。その方が、いいでしょう」


 私達は顔を見合わせると、それとなく笑い合ったのだった。




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