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セルフ異世界転移

「この世界――カルス共和国が存在する世界じゃ」


「意味が分からないな……。この世界以外に世界があるというのか?」


「わしも詳しくは分からないのだが、隣り合う世界の中で、わしは生活をして生きていた。そのことに気がついたわしは、自身の魔術を使って思念体だけ――自分の魂だけを、この世界に転移させたのじゃ。そうすれば、人類に近い動物なんかに憑依して、生き延びることだけは出来ると思ったし、上手くいけば、折りを見て元の世界に戻れないか、試してみることも出来ると──その時は、そう思っていたのじゃ。あとから気がついたのじゃが、元の世界の自分は、既に存在していないのかもしれん」


「え? ちょっと待って。魂って――前いた世界の記憶が、あるってこと?!」


「その通りじゃ」


 私の質問にホログラムの賢者セルスは澄ました顔で答えた。スケールの大きすぎる話に私は混乱した。つまり、神様の介入しない異世界転移――セルフ異世界転移ってこと?


「にわかには信じがたい話なのだが」


 殿下が絞り出すように言うのを、私は黙って聞いていた。緊張していたのか、いつの間にか手のひらには汗をかいている。


「そうじゃろう? 気がつくと、わしは初代国王の身体の中にいた。それまでの国王は一体どこへ行ってしまったのか──国王は残虐非道な政治や商売をしていたらしく、臣下には喜ばれたのじゃ。陛下は変わったと──わしが罪の意識に耐えかねて、側近の宰相や伴侶である妃に、本来の国王は別にいるという話をすると、彼らは喜んで、わしの存在を受け入れてしまった。それはそれで、何だか申し訳なかったがの」


「……」


「それで良かったのかどうかは分からない。じゃが、わしは元の世界では神がいると信じていたのじゃ。しかし、神は存在しないという事実を突きつけられた気がして、それはそれでショックを受けた。この世界には──この世界の理に関係なく、セルスという異物が混入されてしまった」


「……」


「そのせいかは分からないが、この世界に来て1年半後に、襲撃を受けたのじゃ。まるで相手がいないように見える攻撃を、わしらは『見えざるものの手』による攻撃だと言って、何度も反撃し追い返した。じゃが、襲ってくる目に見えない敵は、わしたちを酷く消耗させた。最終的には、前の世界にいた追ってだろうという話になって、こちらの世界への干渉を止めさせるために、異世界へ転移するすることの出来る転移魔術を研究することになったのじゃ」


「え? もしかして、転移魔術はセルスが発明したのですか?」


「そうじゃ。私がいた世界では、転移魔術は物資を送る際にしか使用していなかったし、別の世界に転移する魔術陣は、まだ研究段階だったしの」


「見えざるものの手は、誰にも止められないのか?」


 殿下の質問に賢者セルスは一度動きを止めると、今度は殿下の方を向いて話し始めた。


「それは分からない。私がいなくなった後も、王族に見えざるものの手が今でも迫っているという話を聞いて、驚いたくらいじゃ。なぜ私以外の人間に別の世界の追ってが来ているのか分からないし、転移魔術が今は使用されていないことや、三人しか使えないことにも驚きじゃ」


「ちょっと待って。なんで三人しか使えないことを知っているの?」




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