井戸の中で
──私はラインハルト様のことを大切に思ってますって言ったら、告白してるのと同じじゃ無い? 婚約してるけど、必要以上に相思相愛だねって、思われちゃう。そんなのは駄目だ。この先に現れるはずの、王太子妃に申し訳ないし、ラインハルト様が心変わりをしたときに、残念な思いはしたくない。
「とにかく、井戸へ行ってみましょう。行かないことには、何も分かりませんわ」
殿下は苦笑しながら、私の前に手を差し出した。私は殿下の手を取ると立ち上がり、フィリップと共に井戸へ向かった。
「何もおかしなところはなさそうですね。降りてみましょうか?」
井戸に到着すると、中を覗き込みながらフィリップが言った。干からびた井戸の底には、この間と同じで何も無いように見える。
「そうだな。リトッシュも風魔術を使って降りたと言っていたし、私達も降りてみよう」
フィリップが持って来ていた荷物から縄ばしごを取り出すと、井戸の縁に取り付けた。
「私が先に行って様子を見てこよう。フィリップ、レイラを頼む」
「承知いたしました」
殿下は私達二人を交互に見ると、井戸の底へ降りていった。
「大丈夫だ。何も無い! レイラ、ゆっくりと降りておいで」
殿下が井戸の底で叫んでいるのが見えた。井戸の壁面に掛かっている縄ばしごを見て、恐ろしくなった私は、恐怖を感じながらも縄ばしごに手を掛けた。
降りている最中に、何度も無理だと思いながらも、殿下の頭が近くに見えてホッとしていると、縄ばしごが途中で終わっているのに気がつかなくて、殿下に抱きとめられた。
「おっと、大丈夫?」
「──はい」
いつまでも抱きしめて離さない殿下を見ていると、上からフィリップが降りてきていた。
「ちょっと、イチャイチャするのは調査が終わってからにしてくださいね」
「いっ、イチャイチャなんか……」
「レイラ、道があるよ」
「え?」




