感じる視線
ミーアが村へ帰ってからと言うもの、私は落ち着かなかった。ミーアと婚約者であるトムが、今頃仲良くしていると思うと、もやもやしたし、殿下と会えば最近は婚約式の話ばかりしてくるので、私もいつかはそうなるのかと思うとドギマギして不安な気持ちになった。
「レイラ、どうかしたの?」
「申し訳ありません。少し、ぼーっとしてしまって」
今日は生徒会が休みなので、二人で図書館へ来ていた。今日に限って、ベイルは補習授業を受けていて、殿下と二人きりだった。
リトッシュが無事で、ミーアが発作起こしたあの日、殿下が理事長に上手く説明して、リトッシュに関しては事なきを得たと聞いていたが、リトッシュの記憶が戻らないというのは気になっていた。
「レイラ、また別の男の事を考えているだろう?」
「そんなことは――」
無いと言いかけて、考えているのは事実だと思い直し、何も言えなくなった。決して不埒な思いで考えている訳では無かったが、殿下に上手く説明できる自信が無かった。
「球技大会があった日から、リトッシュ様の記憶が戻らないのは何故なのだろうと思っておりました」
「やっぱり君は、いけない子だね」
殿下はそう言うと、私の肩を抱き寄せて額にキスをした。キスをされた瞬間、図書館の後ろの方で、黄色い歓声があがった。彼女達は、もともとラインハルト様の親衛隊だったが、最近は『二人の中を応援する隊』に変わっていた――正直、何なのか意味が分からない。
「ラインハルト様。そう言った行動は、公衆の面前ではお控えくださいませ。他の生徒に示しがつきません」
私が小声で隣にいるラインハルト殿下に注意すると、殿下は眉をひそめながら、私の耳元で言った。
「私達が仲良くしていると、最近は喜ぶ者もいるだろう? ファンサービスだよ」
再び黄色い歓声が上がった。彼女達に私達の会話は聞こえないはずだから、私達が愛を囁き合っているようにでも見えるのだろう。
「いけません。公私混同は――」
「しっ、静かに。そのまま顔の向きを変えないで話して」
「ラインハルト様?」
「誰かに見られてる気がしない?」
「ラインハルト様が誰かに見られているのは、いつものことだと思いますが……」
「そうじゃなくて、嫉妬でも嘲りでも羨望でもない、なんかもっと別の視線が――」
「お待たせしました、ラインハルト様」
「フィリップ様?! どうしたのですか?」
「どうしたのって、フィリップは私の護衛だよ? 傍にいるのは当たり前じゃ無いか? ああ、そうか。空気が読めない男でごめんね」
「そういう訳ではっ……」
久しぶりに見たフィリップ様は、更に男前になっていた。前髪をかき上げるような仕草で微笑む姿は、ゲームとそっくりだ。
「場所を変えようか」




