表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

53/217

いい匂い

 次の日の朝になって教室へ顔を出すと、教室内は昨日の球技大会の話題で持ちきりだった。一番活躍したリトッシュの姿が見えなくて気になったが、コンラッドが話し始めると教室内は騒然となった。


「普通クラスで、特進クラスが違反したって言い出した人がいたんだ」


「違反って紙のこと?」


「ああ。細工して勝とうだなんて、卑怯だって言って。つまり、あれが無ければ自分たちが優勝したって言いたいのさ」


 アイラはコンラッドの前まで来ると、背筋を伸ばして言った。


「文句があるなら、その時に言うべきよ。引き分けになってから言うなんて卑怯でしょ」


「僕もそう言ったんだ。オリバ先生も練習で見て知っていたし、競技大会のルールには抵触してないと言ったんだ。そしたら、他の人にも言いふらしているみたいで、騒ぎになってる」


「そんなに勝ち負けに、こだわる必要がある?」


「彼らにとって、僕たちに勝てるのは球技大会くらいなんだろ? いくら学園内は平等って言っても、貴族と平民じゃ身分に差があるからね」


「それで、普通クラスの子達が満足するなら、勝ちを譲ってあげてもいいんじゃない?」


「ミーア! なんてこと言うのよ。欲しいから上げるなんて事をしたら、示しがつかないじゃない」


「アイラ様、誰に示しをつけるのですか?」


「誰って、みんなによ。文句を言えば、何でも思い通りになるって、思われても困るし……」


「困るのは誰ですか?」


「ミーア、その辺にしてあげて。貴族には矜持があるのよ。アイラ様の曲がったことは許せないみたいな性格も、あるかもしれないど」


「とにかく、このあと課外授業もあるだろ? 余計な波風は立てたくないよな」


 あと一週間もすれば、実習が始まる。国の機関では無いが、仕立屋や工房の見学は、貴族の令息や令嬢が行けば、私達に気を使うだろう。けれど、就職するのは大抵が平民だ。彼らのプライドを刺激することなく、学園で生活するのは、それなりに骨が折れることだと思った。


「ミーア、何だか良い匂いがするね。何かつけてる?」


 それまで、教室の端にいて話を聞いていたコンラッドは、私達の前まで来るとそう言った。


「コンラッド様? いいえ、何もつけていませんわ」


「コンラッド様? ミーアには婚約者がいるんですの。その辺にしておいてくださる?」


「すまない。何だかその匂いを嗅いでいると、おかしくなりそうだったんだ」


「おかしく――え?」


 コンラッドが、戸惑いながらも匂いの話をしていると、教室の扉が開く音がした。


「どうしたのですか? 予鈴は鳴っていますよ。皆さん、席についてください」


 その時オリバ先生が教室に入ってきて、その話はそれっきりになってしまった。そして、そのまま授業が始まったのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ