心配性の殿下
アイラ達と分かれると、私達はそのまま寮へ向かった。こんな風に、二人で話すのは久しぶりだ。
「レイラ、球は見つけたの?」
「はい。私は中庭で1つ見つけました」
「すごいね。私だったら、1つも見つけられないかもしれない。探し物は不得意なんだよ」
「そうなのですか? 意外ですわね」
「そうでもないよ。側近や学園での友達は、私が何でも出来ると勘違いしているんだ。何でもかんでも出来る訳じゃないのに」
「そう言えば、リトッシュ様も同じようなことを言っていましたわ。ちゃんと家に帰れたかしら? 井戸へ向かってから姿が見えないの──って、きゃっ」
殿下は私の手を掴むと、全速力で走り出した。殿下の足は速くて、転びそうになりながらも、必死に殿下の後をついて行った──寮の入り口の側にある脇道を抜けて、建物の裏まで来ると、私は表から見えない位置にある壁に追い詰められていた。
「レイラ、言ったよね? 他の男と仲良くしすぎだって」
「リトッシュ様と、そんな関係ではありませんわ。姿が見えなかったら、同じクラスの生徒を心配するのは当たり前じゃないですか」
「リトッシュを心配するのは、当たり前?」
殿下は疲れているのか、目が血走っていた。不味いと思った時にはキスをされていた。
「レイラが欲しい……」
(どうしよう。闇落ちし掛かってる?)
下手に刺激するのも良くないし、かといって結婚前の女性が――しかも、未来の王太子妃と呼ばれている私が、身体の関係を持つわけにはいかなかった。その辺は、厳しく指導されていて、もし純潔を失った状態で王家に嫁ぐことになれば、公爵家の恥である。その上、迷信だとは思うが、結婚前に男性と関係を持つと魔術が使えなくなると言う話も聞いたこがあった。
──私は殿下の唇を奪うと言った。
「私も殿下が欲しいですわ。でも私達は王家と王家に連なるもの。国民の皆様に顔向けできないようなことは出来ませんわ」
「そうだね。身分なんていらないんだけどな──レイラがいれば、私は他に何もいらない」
「ラインハルト様……」
殿下は私を抱きしめると、私の手を握って離さなかったのだった。




