思い当たる場所
次の週になって、球技大会が始まった。開会式で、ラインハルト様が開会宣言をすると、一年生はクラスごとに分かれて、球技大会の準備へ入った。
先生の合図とともに始まった一種目目の競技『球入れ』は、リトッシュが風魔術を使って球の向きを変えることで特進クラスの圧勝だった。相手の球が入りそうになると、これもまた風魔術で相手チームの邪魔をして、得点を防ぎ56対102で特進クラスが勝利をおさめた。
「やったね、リトッシュ」
「ああ……」
勝ったのにリトッシュは何故か浮かない顔をしていた。何かを言おうとして、口をつぐんだリトッシュは、少しだけ切なそうな顔をしていた。
続いて行われた二種目目の競技である『球すくい』は、普通クラスの圧勝だった。彼等の中には、紙を水につけた瞬間、球をすくい上げるという──魔術ではないが、反射神経のいい子がいた。実家は豆腐や加工食品を扱っている雑貨屋らしく、商人の娘だという話だった。
「反則じゃねえの?」
中には、特進クラスの紙の二枚重ねを見破り、反則だと言いだす者もいた。内心冷や冷やしたが、オリバ先生に聞いたのだ。反則なんて、言われる筋合いはない。
(みんなでちゃんと、反則に当たらないか考えたんだもの。違うわよ)
そう言いたかったが、言えなかった。私達の紙の二枚重ねを見破った普通クラスの男の子は、普通クラスの先生に何かを言っていたが、結局は普通クラスが勝ったので、どうでもよくなったみたいだった。
昼食を各自でとって、午後になると三種目目の競技である『球探し』が始まった。雨が降り出しそうな曇り空の中、私達は虹色のボールを探し回った。校庭や校舎の至る所に隠された球を見つけるという、単純なようで難しい競技だった。
学園の敷地内のどこかにあるという話だったが、なかなかボールは見つからない。講堂の中に飾られているトロフィーの中にあったり、座席の下にある嵌め込み型引き戸の中や、中庭にある手洗い場の隙間に隠されているなど、みんな探し当てるのに苦戦して、日が傾きかけていた。
「あと3個だというのに、なかなか見つからないわね」
「ええ。このままいくと、時間切れかもしれません」
近くを歩いていたアイラの言葉に相づちを打った私は、他に探していない場所がないか、考えを巡らせていた。普通クラスの得点は14個見つけたことにより、14点だった。総合得点でも一点差で負けているので、虹色の球を見つけられなければ、確実に特進クラスの負けである。
「アイラ様、どこか他に思い当たる場所は、ありませんか?」
「そうねぇ。探していない場所で言えば、別棟の近くにある井戸かしら?」
「でも、あそこは――立ち入り禁止になっています。さすがに違うのではないでしょうか?」
「そうよねぇ」
学園と森との境目にある井戸は、使われていないばかりか、立ち入り禁止になっていた。亡くなった賢者セルスの霊が出るとか、夜中に叫び声が聞こえたなど、七不思議みたいな噂もあり、誰も近寄らない場所だった。
「可能性としては低いと思いますが、僕が見てきます」
「リトッシュ、危険じゃない?」
「大丈夫。なにかあれば大声で叫ぶし、僕に出来ることは、これくらいだから……」
「リトッシュ?」
「何でもない。とにかく見てくるよ。みんなは待ってて」
「あ、ちょっと……」
私はリトッシュを引き留めようとしたが、彼は私に構わず、走って行ってしまった。




