自由な恋愛
次の日の日曜日。殿下に誘われて、久しぶりに街へ視察へ来ていた。殿下のエスコートは完璧だったし、楽しそうに笑っていた。けれど、ふと気がつくと真顔になる時があった。
「ラインハルト様、どうかなさいましたか?」
「なにが?」
「疲れてますか?」
「そんなことはないかな」
あさっての方向を見て答える殿下を見て、他に好きな子が出来たのだろうかと思った。なんせ、ゲームではモブキャラですらないのに、何故か悪役令嬢ポジションという不思議な立場だ。
この世界の常識から考えると、一度取り決められた王族との婚約破棄なんてあり得ない話だ。
けれど、私からしてみれば、いつ婚約破棄になっても、おかしくはないと思っていた――思ってもみないことは突然起きる。それは、前世や今世で学んだ数少ない私の経験則から来る直感だった。
「ラインハルト様。もしかして、他に気になる方が出来ましたか?」
「──レイラは自分の事を言ってるの?」
「いえ、そのようなことは」
「ベイルから聞いたよ。リトッシュとキスしたんだって?」
ベイルが言っていた言葉を急に思い出した私は、青くなった。
「──いえ、あれは事故で」
「うん。そう聞いている。そういう話は、レイラの口から直接聞きたかったかな」
「えっと、ごめんなさい」
「時々だけど、レイラは私のことが、どうでもいいみたいに見えるんだ。私ではレイラにとって不足かな?」
「不足だなんて──ただ、ラインハルト様にはもっといい方がいらしゃるはずだって、時々思うんです」
「どうして?」
「この先、魅力的な女性がいっぱい現れると思うんです!」
「例えば、ミーアとか?」
「そうそう、ミーアって――なんで?」
何で自分の考えていることが筒抜けなのだろうかと思った。もしかして殿下は人の心を読む魔術を習得したのだろうか。
「どうしたの?」
「いえ、ミーアじゃなくても家格とか性格とか見た目で、もっと殿下に釣り合う人が、このあと出てくる予定なんです!」
「レイラは予知能力を持ってるの?」
「持ってません!」
「じゃあ、どうしてそんなひどいことを言うの?」
町の大通りを抜けた牧草地まで来ると、殿下は手を離して、私を見つめていた。私は殿下の泣きそうな榛色の瞳を見つめた。
「なんていうか……。聖魔術が使えるから、殿下の伴侶になるのは少し違うなと思って。貴族だから、自由な恋愛は出来ないと思ってるんです。でも、ラインハルト様にはもっと幸せになって欲しいし、幸せになれるはずだって」
「見えざるものからの攻撃――それがなくなったら、レイラも私から解放されて、好きな人と結婚できるね」
(そうじゃないの。私が好きなのはラインハルト様なの!)
「そんなわけ――見えざるものを倒すおつもりですか?」
「レイラを解放してあげたい。本当は嫌なんだろう? 私との結婚が」




