公爵家の護衛
反対側からアイラが歩いて来るのに気がつかなかった。もしかして、今の会話を聞かれてしまっただろうか――もしそうなら、この上なく恥ずかしい。
「ごきげんよう」
「ごきげんようです。お貴族レイラ様」
「ミーア、そこは『ごきげんよう、レイラ様』でよろしくってよ」
「はい。ごきげんよう、レイラ様」
気がつけば、ミーアはアイラの側に従者の様に立っていた。悪役令嬢の従者が聖女って、ありなの?!
「ごきげんよう、ミーア。あなた、村を抜けて来て大丈夫なの?」
「はい。村のみんなは大出世だって言って、喜んで送り出してくれました」
「婚約者のトムさんは?」
「『頑張って来い』と言っていました」
「全寮制よね、この学校」
「はい」
「三年間も遠距離恋愛になっちゃうわよ?」
「はい、大丈夫です!」
「アイラ様、ミーアはアイラ様の護衛なんですか?」
「ええ、名目上はね。公爵家が金銭的にバックアップしてるから護衛だけど、どっちかっていうと、私は学友のつもり」
「ありがとうございます、アイラ様。これからも、よろしくお願いします」
そう言ったミーアは、キラキラとした瞳でアイラを見ていた。
「この後、イベントが起こるわよ」
「イベント?」
「何かが起こるって事。まあ、いいわ。そのうち、分かるし」
「何かって……」
「明日の準備がまだ終わってないの。この辺で失礼させてもらうわ。ごきげんよう、殿下。レイラ様」
「ごきげんよう、アイラ様。ミーア」
「アイラ嬢、明日からレイラをよろしく」
「心得ておりますわ、殿下。失礼致します」
アイラが去った後、私は思い出そうとしていた。このゲームの次に起こるイベント内容を――何だっただろうか。そもそも、キャラの立ち位置がおかしいから、イベントが起こるかどうかも分からない──何も分からないまま、私はベイルに促されて、寮へ戻ったのだった。
※※※※※
オリエンテーション後に実力試験があり、私は特進クラスになった。オリバ先生の授業を事前に受けていたため、当然と言えば当然の結果だったが、何となく素直に喜べなかった。
もともと家庭教師をつけている高位貴族と平民では魔術に対する理解度が違う。普通クラスと特進クラスに分ける必要性は感じなかったが、理解度の違う生徒を一緒に教えるのは教師側も大変らしい。




