入学式前日
魔術学園に入学する前日。就寝前に部屋のドアをノックする音が聞こえたので、私は返事をした。
「はい」
「私だ、ラインハルトだ」
「……はい」
ベイルを下がらせた後だったので、出るかどうか迷ったが、大事な話かもしれないと思い直し、ドアを開けた。
「就寝前にすまない。もう寝るところだったか?」
「え、ええ。何か、あったのですか?」
「明日、魔術学園へ一緒に行こう」
「ラインハルト様、もしかして……」
「そうなんだ。私にも魔術が発現した。だから、明日から魔術学園に通うことになる」
「明日から?!」
「特別に学園長に許可してもらったんだ。本当は、二週間前に申請しないといけないんだけど、王族だということで特別に許可してもらったよ。しばらくは通いになるけど、一緒に学校へ行けるよ!」
学校へ行くのは少し憂鬱だったし、特に嬉しくもなかった。でも、殿下の嬉しそうな顔を見ていたら、何だか私も少し楽しみになってきた。
「……ラインハルト様に負けてられませんね。私も頑張ります」
「レイラなら、大丈夫だよ」
「公務は大丈夫ですの?」
「それなんだけど、しばらくは学園にいなさいって、父上が。最近は、特に攻撃がひどくって」
「そう言えば、学園には特殊な結界が張ってありますものね」
「大昔にいた大賢者セルスが張った学園の結界は、何も通さないと言われているからね」
「それなら、なおさら安全ですね」
「遅くにすまなかった。レイラ、おやすみ」
「おやすみなさいませ」
私はドアを閉めると、いよいよゲームの舞台となる物語が始まると思った。攻略対象者である、王太子殿下、リトッシュ、フィリップ、それから悪役令嬢であるアイラ、聖女のミーア……。完全にモブキャラの私に、ベイルとベイン。貴族は側仕えを1名連れて行けるけど、連れて行くキャラクターによって、ストーリーが変わることもあった。
それとは別に気になっているのが、見えざるものの手による攻撃――完全にストーリーにはない展開だ。意味がわからない。私が悪役令嬢のポジションにおさまってしまっているのも、おかしいと思う。
「……考えても、しかたがないか」
私はベッドに入ると疲れていたのか、すぐに眠ってしまったのだった。




