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殿下の誕生日

 一週間後。今日は殿下の誕生日だった。いつものように、視察という名目で街へ遊びに来ていた。


 町の中心にある広場のベンチへ座ると、私は作ってきたサンドイッチを取り出し、殿下へ手渡した。


「何これ、うまい。チキンが挟んであるの?」


「はい。ルレ菜と甘辛ダレのソースのかかったチキンが挟んでありますわ」


「レイラが作ったの?」


「はい、早起きして頑張りました」


「すごいね。えらいし、旨い」


 殿下は手にしていた残りのサンドイッチを、一口で食べると私の頭を撫でていた。もう恒例行事になりつつある、頭の撫で撫では避ける気も失せていた。これを、さりげなく拒否しようものなら、殿下はひどく不機嫌になるのだ。顔には出さないが、しばらくは目を合わせてくれない。


「ありがとうございます。あれ? 殿下、ソースが口についてますよ」


「ええっ? どこ?」


「唇の横――右側です。ああっ、そっちは左で……」


「取ってくれる?」


「え? ちょっと、待ってください」


 私はポケットからハンカチを取り出すと、殿下の膝に乗り上げて、口元を拭いていた。すると、拭き終わったタイミングで殿下に抱きしめられ、額にキスをされた。


「もぉ……」


 最近、殿下は私によくキスをするようになっていた。セトカ喫茶の一件があってから、頬や額にキスをしてくるのだ。私は頬に熱が集まるのを抑えることが出来なかった。


「レイラ、かわいい……」


 ――その時、風が吹いた。見覚えのある突風に、違和感を感じ身構えると、その風は刃のように私達を襲ってきた。


「ウォールプロテクション!」


 思ってもみない方向から魔術が飛んできて驚いたが、もっと驚いたのは、その魔術を使った人物である。


「フィリップ様……」


「殿下、レイラ様。ご無事ですか?」


「ああ、大丈夫だ。フィリップ、礼を言う」


「フィリップ様も、魔術が使えたのですね」


「ええと、騙していた訳ではないのです。先日、魔術が発現しまして──私も、魔術学園へ通うことになりましたので、よろしくお願いします」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


「……」


「殿下、大丈夫ですか?」


「ああ、ありがとう。レイラ」


 その日は、そのまま城へ帰った。私は殿下の浮かない表情が気になりながらも、廊下の前で殿下と別れると、自分の部屋へ戻ったのだった。




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