聖女の噂
「ごめんなさい。少し驚いてしまって──回避しようとしたせいなのかしら? 設定は、かなり変わってきてるのよね。レイラ様、聖女はあなたよ」
「えっ、私??」
「街の人達は、皆そう言ってるわ。優しくて、聖魔術が使えて、王太子殿下を傍で支える心の美しい聖女だって。王太子殿下を側で支えられるのは、レイラ様だけだって」
自信満々に言いきるアイラの様子に、私は狼狽えた──違う、そうじゃない。
「ちょっと待って。私は、他に婚約者が現れるまでだと思っていたの。だってアイラ様は、聖女が王太子殿下と結ばれると言っていたし……」
「そうだったかしら? でも聖女はあなたよ」
「それだって──ミーアは、どうなるのよ?」
「だから、婚約したのよ。まだ同棲みたいだけど、彼女には魔術が発現したら公爵家の護衛にならないかって言ってあるの。先日、彼女も魔術が発現して私と一緒に魔術学園へ行くことが決まったわ」
聖女が同棲という展開は予想していなかった。これから、どうなるのだろうか──アイラは、私が聖女だって言ってたけど、私は聖女になりたいなんて、思ったことは一度もない。
「それにしても、ミーアが護衛とは……」
「手に職がつくし、諸経費は全て公爵家が持つと言ったら、喜んでたわよ」
何をどうしたら、聖女が悪役令嬢の護衛につくのか、訳が分からない――頭が痛くなってきた。もしかしたら、ゲームの設定を気にし過ぎなのかもしれない。
「魔術学園でも、色々教えてくださいませ、アイラ様」
「よろしくってよ」
言った後に、高笑いでもしそうな言い方に、私は吹き出しそうになっていた。攻略対象者は四人とも魔術学園へ行くはずだ。あと三ヶ月以内に、フィリップや殿下にも魔術が発現するのだろうか――お茶会がお開きになった後、私は疑問を抱えたまま、自分の部屋へ戻ったのだった。




