魔術学園入学に向けて
港の事件から半年がたって、魔術学園に入学するまで、あと僅かという時だった。制服や教科書を揃える中、私は一つの思いに捉われていた。ラインハルト様の見た目は、日に日にゲームの絵に近づいていくのに、肝心の聖女が現れない。その上、ラインハルト様は、今でも魔術が使えなかった。このままでは、ゲームのストーリーと、違う展開になってしまう──そんな気がしていた。
「どうなるのかしら?」
一人で溜め息をついていると、またしてもアポなしで遊びに来ていたアイラが、向かいの席で私のメイドが用意した紅茶を、優雅に啜りながら言った。
「どうにもなりませんわ」
「アイラ様は、前に生きていた記憶があると言っていましたね? いつから記憶があったのですか?」
私にも日本で生きていた時の記憶があるという話を、ついつい言いそびれていた――というより、今になってばれたら、何か言われるような気がしている。
「生まれたときから――と言いたいところですけど、さすがに赤ん坊の頃の記憶はありませんわ。物心がついた時から記憶はありますの」
「一つ疑問だったのですが、アイラ様のお話だと、私は断罪されてしまう悪役令嬢の立場にあると思いますの」
「レイラ様。わたくし、魔術学園に入学することになりましたの」
「え?」
「実は、魔術が使えるようになりましたの」
「使える?! いつから使えたのですか?」
「婚約破棄になった後、安心したのか高熱を出してしまいまして──その後、急に魔術が使えるようになりましたの。お父様が、場が混乱するだけだろうから、今は黙っていなさいと言って──あっ、でも陛下には伝えたらしいんです」
「それなら、婚約者の立場も――」
「ストップ。それは言わないでくださいませ。私は自分から婚約者の立場を捨てたのです。今更、戻る気にもなれませんし、お二人の仲を引き裂く気にもなれませんわ」
アイラは、私の目の前に人差し指を突き出すと左右に振って、そんなことを言うものではない――という様な顔をしていた。
「それなら、聖女様ですね。聖女様が現れないか、気をつけて見ていないと。アイラ様にとっては、敵なんですよね? でも、アイラ様が側にいれば、心強いです。聖女が現れてもなんとかなりそう」
私がそう言うと、アイラは驚いたのか、ティーカップを持ったまま、固まっていた。
「アイラ様?」




