大賢者セルス
「そんな……。殿下は、ずっと何かに怯えながら生きていたのですか? 国王陛下の子供は一人なのに、反対勢力の嫌がらせにしては不可解な点も多いと、実は不思議に思っていたんです。まるで、この国が滅んでも構わないと言っているような――そんな襲撃に感じました」
「レイラ様、そういう所は鋭いんですね」
「そういうところって、どういうところですか?」
「──その襲撃者についてですが、誰なのか、分からないのです」
「え? 分からない?」
「大賢者セルスの話は知っていますか?」
「大昔に活躍したという魔術師だということは、噂で知っています」
知っているというか、噂でオリバ先生の二つ名が現代版セルスだと聞いて、昔はそんな人がいたんだな、と思ったぐらいなんだけど。
「セルスはこの国の人間ではないと言われています。この話は、転移魔術の合格者にしか知らされていないので、他の人には秘密ですよ? あなたのお父様、フレイア伯爵にもです。いいですね?」
「はい」
「セルスは、もともと住んでいた国で罪を犯し、国外追放になって、この国に来たと言われています。セルス本人は、冤罪だと言っていたそうですが、この国の人たちはそれが本当のことなのか、知ることが出来ませんでした。だって、セルスの住んでいた国とは空間ごと切り離されて別の世界になってしまったのですから」
「オリバ先生、空間ごと切り離されたとは、どういうことですか?」
「これは私の推測ですが、おそらく分離魔術を応用したものを使ったのだと思います」
「分離魔術?」
「現代で分離魔術を使える者はいないので、仮定での話になりますが」
「……」
「この世界には、他にも国があります。海を越えた先に、ティンバ王国、メルドリ共和国、ハットゥーバ合衆国があります。いずれの国とも戦争を機に国交は途絶えてしまいましたが、国内の各地に設置されている転移魔術陣がで繋がっているものと思われます。他国と繋がることは禁止されていますし、また出来ないようになっています。ですから、試験では実は人間性を試されるような内容もあります――すみません、しゃべり過ぎましたね」




