婚約者に選ばれた理由
私が頷くと、先生は懐から魔術具を取り出し、側面にあるスイッチのようなものを押した。押された瞬間、周囲に防御結界が張られたのが分かった。
「あなたが殿下の婚約者に選ばれた理由は3つあります。1つ目は、あなたが金髪に金色の目をしているということ。2つ目は、魔術が使えるということ。3つ目は、あなたが殿下の命を救ったことにあります」
「先生、3つ目ですが、殿下の命を救ったのは貴族として当然のことだと思います」
「それでもです。たった8才の子供が、自分の命を省みずに他人の命を救ったのです。たとえ魔術が使えたとしても、並大抵の人間ができることではありません」
「いや、あれは身体が自然に動いたというか――困っている人がいたら、助けるのは当然じゃないですか」
「そうとは限りません。自分の私腹を肥やすことしか考えていない貴族は大勢います。貴族の中には生きるために、仕方なく悪事スレスレの事をしている人もいれば、自分が儲けることしか考えていない人もいます。レイラ様は、そういう人間を見抜き、人との付き合い方を学んでいかなければなりません――話が逸れましたね。自分の命を救ってくれた子と婚約したいと言ったのは、殿下なんですよ」
「殿下が?」
「度重なる襲撃に人間不信に陥っていたようです。周囲には、信用できる人間しか置きたくないと言っていました。また、いつ襲撃があるか分からないため、会うのはなるべく控えていたようですよ」
「それなら、私が婚約者でなくてもよいのではありませんか? 護衛とか――側にいて欲しいなら、婚約者である必要は……」
私はそう言いながら、自分の胸が苦しくなるのを感じていた。胸を抑えながら言葉を続けようとすると、オリバ先生が微笑んでいた。
「それだけでは、ありません。これは迷信みたいなものですが、金髪に金目の女性は王家の救世主となり、幸福をもたらすだろう――という言い伝えが古くからあるのです。しかも、王家の血筋で金髪に金目の女性は必ずといっていいほど、魔術が発現して使えるようになる。そういう理由から、アイラ様は生まれたときから王太子殿下との婚約が決まっていました。しかし、当の本人は魔術が使えないことに悲観するばかりか、殿下との婚約を嫌がっていたと聞いています。それを耳にした殿下がアイラ様ではなく、レイラ様を選ぶのは当然のことでしょう」




