国家機密
それから二週間後。私は寝ても覚めても殿下のキスを思い出すという、ままならない状態に陥っていた。
「はぁ……」
「お嬢様。物思いにふけるのは私としては一向に構いませんが、マナー講座のお時間ですので……」
ベイルの言葉に我に返ると、私は次の講義のために準備していた本を手に取った。
「オリバ先生が待ってるのね。行かなくちゃ」
「今日は、お休みしますか?」
「どうして? 行くわよ」
前世でまともに学校へ通えなかった私は、授業が普通に受けられるということに感動していた。前世の授業とは、ちょっと違うところがあるかもしれないが、何かを普通に学べると言うことは大切なことだ。
※※※※※
身支度を終えて通路を挟んで向かい側にあるオリバ先生の部屋へ行くと、準備は既に終わっていて、テーブルにはスプーンとスープが置かれていた。
スープを音を立てずに飲むことが出来るか、本を頭の上にのせたまま部屋の端から端まで歩くことができるか、淑女の礼は出来るかどうか──という内容だが、ゲームではポイントの加算対象になっていた。
クリアすると、ポイントが貯まって殿下のスチルと交換できるという仕組みになっている。
「ずっ……」
スープを飲むのに音を立ててしまった私は、殿下のことを思い出しながら、スチルがもらえないなら、ポイントが貯まったら殿下との関係が進んでしまうのだろうか――などと変な方向に物事を考えていた。
顔を上げると、向かいの席に座っているオリバ先生が私を見て微笑んでいた。オリバ先生の笑顔が怖い。
「レイラ様。最近、練習に身が入らないようですね。何かありましたか?」
「いえ、何も……」
「殿下と何かありましたか?」
「……」
私は自然と頬に熱が集まるのを感じながら、自分ではどうすることも出来なくて、思わず俯いていた。
「私なりに心配だったのですよ。殿下と上手くやっているのなら、良かったです」
「オリバ先生、どうして私なのでしょう? はじめはアイラ様が婚約者だったはずです。それが、金髪金目の魔術が使えるというだけで、私は殿下の婚約者に選ばれました。今までは貴族だから仕方がないと思っていましたが、それでも少しおかしいと思うのです」
「そうですね。本当は、もう少ししてからお話ししようと思っていたのですが、来年からは学園生活も始まりますし──いいでしょう。なぜレイラ様が婚約者に選ばれたのか、お話ししましょうか。これから話す話は、国家機密に関わります。秘密に出来ますか?」
「……はい」




